30m以上ジャンプする小型ロボット Disney含む米国チームが開発:Innovative Tech
米University of California, Santa Barbara、米Disney Research、米California Institute of Technologyの研究チームは、素材を曲げて蓄積した力を使い、ロケットのように上方向へ30m以上ジャンプする小型ロボットを開発した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米University of California, Santa Barbara、米Disney Research、米California Institute of Technologyの研究チームが開発した「Engineered jumpers overcome biological limits via work multiplication」は、素材を曲げて蓄積した力を解放するシンプルな構造で、ロケットのように上方向へ30m以上ジャンプする小型ロボットだ。この高さは現在の世界記録の3倍だという。
研究チームは2017年、このプロジェクトを始めた当初、カーボンファイバーの棒とワッシャー、ダクトテープ、比エネルギーが高い輪ゴムなどを使い試作品を制作した。飛ばした結果、高さ8〜10メートルほどジャンプし、可能性を感じたという。
研究チームはさらに高くジャンプできないかと模索し、輪ゴムの支持構造を軽くすること、輪ゴムを伸ばすためのモーターとギアの設計、エネルギーを素早く放出する機構などに注力した。
その中で、輪ゴムの代わりにカーボンファイバー製の弓形バネを4本使用し、さらに弓形バネに高比エネルギーゴムを複数追加して全体の比エネルギーを高めるという新しいコンセプトを提案する。
このコンセプトでロボットを試作した。最終バージョンの大きさは約27cm、重さは約28g。飛ばす際は、小さなモーターを使用しポリエチレンラインを巻き取りスプリングを圧縮する。本体はカボチャのような形になり力が蓄積され、ラッチを解放し発車すると、ロケットのような棒状に収縮し空気抵抗を抑えて空高く飛ぶ。シンプルだが、試行錯誤の上に何度も調整された作りだ。
結果、高さ32.9mまで飛ばすことに成功した。
研究チームは提案するジャンプロボットが宇宙探査で使えるのではないかと考えている。表面重力の弱い月にある場合、約125mの高さまでジャンプし、1ステップで一方向に約0.5km移動すると予測している。
Source and Image Credits: Hawkes, E.W., Xiao, C., Peloquin, RA. et al. Engineered jumpers overcome biological limits via work multiplication. Nature 604, 657-661 (2022). https://doi.org/10.1038/s41586-022-04606-3
関連記事
- 「持ち上げて伸びるネコの骨や肉を感じる」――猫の体内をリアルに再現したロボット 大阪芸大などが開発
大阪芸術大学とATR(国際電気通信基礎研究所)の研究チームは、呼吸や身体に触れたときの動作などを忠実に再現する猫型ロボットを開発した。リラックスした猫を持ち上げた際の柔軟に伸びる特徴と呼吸の表現にこだわった。 - 「ヤックル」みたいな四足歩行ロボ、川崎重工が開発中 人が乗って操縦も可能
川崎重工業は、映画「もののけ姫」に登場する架空の動物「ヤックル」のような四足歩行ロボット「RHP Bex」を開発している。同ロボットは、100kgまでの荷物を運ぶ積載能力を持ち、人が乗って操縦することもできるという。 - 握力を増強できるバナナみたいな手袋、米MITなどが開発 編物の人工筋肉を空気で膨張
米MIT CSAILと米Tencent Americaの研究チームは、センシング機能を搭載した織物ベースのソフトな空気圧アクチュエータを開発した。 - 「ロボットそば屋」JR東が展開加速、王子駅に新店舗 2026年までに30店舗へ拡大
JR東日本クロスステーションが、ロボットがそばを作るそば屋をJR王子駅にオープンする営業開始は4月22日。同社がロボットを活用するそば屋をオープンするのは3店舗目。同社は今後、2026年までに同様のそば屋を30店舗まで拡大する方針。 - 卓球の正しいスイングを教えてくれるロボットアーム VR環境下でマンツーマン指導
早稲田大学中島研究室とQatar Universityの研究チームは、VRシステムとロボットアームを連動させた卓球トレーニングシステムを開発した。VR環境下でユーザーの手の動きを誘導することで、卓球の打ち方の練習を効率的に行い、スキルアップをサポートする。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.