食べ物をARで青色にしたら食欲は減る? 公立はこだて未来大が検証:Innovative Tech
公立はこだて未来大学平田竹川研究室の研究チームは、シースルー型HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用い、食事中の食べ物にARで青色フィルターをかけると食欲や空腹度はどうなるかを検証した論文を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
公立はこだて未来大学平田竹川研究室の研究チームが発表した「シースルー型HMDを用いた食べ物への動的な映像効果重畳による食欲減衰手法の提案」は、シースルー型HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用い、食事中の食べ物にARで青色フィルターをかけると食欲や空腹度はどうなるかを検証した論文だ。食事が進むにつれ、青色フィルターが濃くなる仕組みも取り入れた。
過食を抑えるためのアプローチの1つとして、色彩の変化による食欲減衰がある。特に青系統はより食欲を減衰させる色として知られている。一方でおいしく食べる体験が損なわれる。
今回は料理をおいしく食べながらも食欲が減衰する効果が得られないかを検証する。研究ではシースルー型HMD(HoloLens)を使用し、食べている料理に青色フィルターを重ねる方法で食体験の満足度を調査する。また青色フィルターの濃さを食事が進むにつれ濃くする条件も取り入れた。
実験は、おにぎり(具は鮭、海苔なし)を手でつかみ1個食べる体験を行う。参加者6人を対象に以下の条件3つで実施した。
(1)青色フィルター不透過率0%から始まり、一口食べる毎に不透過率33%増加し3回目で99%まで段階的に濃くする。(2)最初から青色フィルターを不透過率100%で提示する。(3)HMDは装着するが青色フィルターを一切かけない。
アンケートによる評価を行った結果、青色フィルターを一切かけないにはかなわないが、最初から不透過度100%で青色フィルターをかけるよりも、段階的に濃くする方が食事体験の満足度が高くなると分かった。
実験前後の食欲、空腹度については、段階的に濃くする条件が最も差が大きく、食欲を減衰させつつ満腹感の上昇が確認できた。この結果から、青色フィルターを食事が進むにつれ濃くする方法を取ることで、食事量を減少させ食べすぎの抑制につながる可能性を示唆した。
さらに段階的に青色フィルターを濃くする条件は、食事時間が最も長くなることが分かった。この結果は、肥満の原因の1つである早食いを抑える効果が期待される。
Source and Image Credits: 村井 大輝, 竹川 佳成, 寺井 あすか, 平田 圭二. シースルー型HMDを用いた食べ物への動的な映像効果重畳による食欲減衰手法の提案. 情報処理学会 研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)2022-EC-64, 30号, 1-3ページ
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