「ITエンジニアがヤバいくらい本を買うようになった」──SaaS企業が書籍購入制度にメス、利用数14倍に 何を変えた?
書籍購入制度の変更により、ITエンジニアによる本の購入が「ヤバいくらい増えた」というSaaS企業。社員の意欲を高めるに当たり、どんな制度変更をしたのか。
社員向けの福利厚生として、さまざまな企業が導入する書籍の購入補助制度。社員の学習促進などを目的に取り入れる企業が多い一方、制度の利用が少ないと嘆く声もある。
建築業界向けSaaSを提供するスタートアップ、アンドパッドもその一社だ。同社はITエンジニアの成長支援を目的に書籍の購入補助制度を導入していたが、あまり利用されていなかった。そこで2月に制度を刷新したところ、本の購入数が14倍に。「利用がヤバいくらい増えた」(下司宜治VPoE)という。アンドパッドは既存制度をどのように変更し、エンジニアの学習意欲を刺激したのか。
個人所有を許可、電子書籍解禁
アンドパッドが採用する書籍の購入補助制度は、社員が自ら購入した本の経費精算を認める形だ。IT系など一部ジャンルの書籍のみ購入でき、金額の上限はなし。ただし旧制度では、買った本の個人所有を認めていなかった。
会社の資金で買った書籍になるので、読み終わった後は会社の本棚に返却するよう定めていた。返却の必要があることから、原則として電子書籍は購入できず、本への書き込みなども認めていなかった。
新制度では、本を個人所有できるよう仕組みを変更した。これにより、社員は電子書籍でも本が買えるように。書き込みも認め、勉強に使いやすくした。読み終わった本のうち、書き込みなどが少ないものは会社の本棚に寄付できる仕組みにした。
制度の刷新により、社員による本の購入数は増加した。刷新前の2カ月間は制度の利用が3件しかなかったが、刷新後の2カ月間では14倍の42件に増加。本を回し読みする輪読会など、社員の自主的な勉強会の頻度も増えた。以降も刷新直後ほど多くはないが、旧制度よりは利用があるという。
「社内Slackでも評判のいいリニューアルだった。個人的には輪読会を目的とした購入が多く、想定外に感じている」と下司VPoE。アンドパッドは今後も、課題のある現行制度を刷新していく方針だ。
「お金がかからないことはそれはそれでいいことだが、従業員が成長する環境を整えるに当たり、使われない制度があっても意味がない。『作ったはいいが、運営できていない制度』は当初の目的に合うよう随時見直す」(下司VPoE)
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