バイデン大統領、中絶と患者のプライバシーに関する大統領令に署名
バイデン米大統領は、連邦最高裁が妊娠中絶を違憲とする判断を下したことを受け、中絶する人を犯罪者にしないための大統領令に署名した。同氏は「共和党の一部過激派とつながり、制御不能になっている最高裁判所がわれわれの自由と自治権を奪うのを許すことはできない」と語った。
ジョー・バイデン米大統領は7月8日(現地時間)、「Executive Order on Protecting Access to Reproductive Healthcare Services」(リプロダクティブヘルスケア サービス へのアクセスの保護に関する大統領命令)に署名した。米連邦最高裁が6月24日、妊娠中絶は女性の権利だとした1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す判断を示したことを受けたものだ。
この判決で、多くの州の法執行機関が起訴措置のためのデータとして中絶した疑いのある人の月経周期アプリデータやWeb検索の位置データなどをプラットフォーム企業に請求する可能性が生じた。
大統領令では、国民の医療へのアクセス、避妊、患者の安全を保護するものだが、患者情報のプライバシー保護も明示している。
「この大統領令は、患者のプライバシーを保護するための追加措置を講じる。これには、機密性の高い健康関連データの転送や販売への対応、リプロダクティブヘルスケア(性と生殖に関する健康管理)サービスに関するデジタル監視との戦い、不正確な情報やスキームからのリプロダクティブヘルスケアを求める人々の保護などが含まれる」(大統領令より)
「米連邦取引委員会(FTC)は、リプロダクティブヘルスケアサービスに関する情報提供を求める際、消費者のプライバシーを保護するための行動を検討することを奨励する」
保険社会福祉省(HHS)に対しては、中絶やリプロダクティブヘルス関連の患者データを保護するための措置を講じるよう求めている。HHSは6月末に、iPhoneおよびAndroid端末での個人情報を保護するための設定方法を紹介するガイダンスを公開した。
バイデン氏は署名に当たり、「共和党の一部過激派とつながり、制御不能になっている最高裁判所がわれわれの自由と自治権を奪うのを許すことはできない」と語った。
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