段落ごとに文章を自動要約するAIテキストエディタ ドイツの研究者らが開発:Innovative Tech
ドイツのUniversity of Bayreuthの研究チームは、段落(パラグラフ)単位で自動要約する学習ベースのライティングツールを開発した。書き手が行う文章添削の効率化を支援するという。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
ドイツのUniversity of Bayreuthの研究チームが開発した「Beyond Text Generation: Supporting Writers with Continuous Automatic Text Summaries」は、段落(パラグラフ)単位で自動要約する学習ベースのライティングツールだ。書き手はこのツールを使って文章の概要を素早く把握し、得た洞察を本文に適応することで構造的な添削を効率よく行える。
誤字脱字のチェックや文法チェックを自動的に行ったり、継続フレーズを提案したりして、書き手の創作活動を支援するツールが数多く開発され、人間のパフォーマンスと生産性を高めている。
だが良い文章を書くためには、書き手の意図を伝え読み手のニーズに応える必要がある。そのためには単語や文法レベルの局所的な修正だけではなく、原稿を全体的または部分的に見渡して反復的に把握することで推敲(すいこう)する構造的な改訂スキルが求められる。
今回のツールでは、作品の構造的な修正を支援する段落単位の自動要約システムを提案する。システムは、エディタに書かれた本文から要約を機械学習モデルを用いて段落ごとに生成する。
生成された要約は本文の横に並列して提示され、書き手は本文と要約を同時に閲覧しながら書き進めることができる。これにより書き手は、短い時間で何度も全体像を概観でき、鳥瞰(ちょうかん)視点を持った推敲が行える。
ユーザー評価では、合計12人の参加者にエッセイを書いてもらった。その際に今回のツールを使用してもらい、段落単位の自動要約から得られた効果を評価してもらった。
その結果、「文章の構造を考えるようになった」「自分の文章が長いことに気が付いた」「文章を長時間かけて読まないですんだ」「章を整理したり、概要を把握したりするのに役立つ」などの良好な回答が得られた。
具体的には、段落の構造を確認して修正するために使用できる可能性を示唆した。その段落で自分がどこに焦点を当てたかを振り返る目的や、目的の主張や伝えたいメッセージが問題なく書けているかの確認などに活用できた。
このように要約から本文に影響を与えるケースで利用する参加者がいた一方で、反対に本文を修正した結果を要約で確認する逆転の発想をする参加者もいた。例えば、この文章を削除しても要約はぶれないか、反対に文章を加えても要約はぶれないかという使い方だ。
さらに、段落の分割や結合にも役に立ったという。例えば、要約が短すぎると統合が必要ではないか、反対に長すぎると分割すべきではないかなどの考えるパラメーターとしての使用だ。もちろん段落の並べ替えにも活用できるだろう。
他にも、要約を見てbotはどのような視点で本文を見ているかの第三者目線での意見が確認できると考える参加者もいた。AIが生成する要約と自分自身の心で考える要約を比較する作業を行っていたという。
参加者の中には、最後の結論部分を書く場面で、要約をベースとしたまとめを書いた人もいた。とても要領よく書けたという。
どういったシーンで使えるかの質問では、物語文だけでなくニュース記事やブログで何かを説明するエントリなどの簡潔さが求められる文章でも冗長な文章を回避するのに役立つと考える参加者もいた。
参照文献を素早く読み解くのに最適というケースもあった。文章を書く場合において長文を読まないといけない場合、このツールに適応し要約した文章を読んで短時間で理解できたという。
Source and Image Credits: Dang, Hai, et al. “Beyond Text Generation: Supporting Writers with Continuous Automatic Text Summaries.” arXiv preprint arXiv:2208.09323(2022).
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