「Sニー」に行って「魔改造の夜」に出たネコとケトルに会ってきた:ソニーのゆるふわロボット「poiq」との日々(特別編)(4/4 ページ)
NHKの番組「魔改造の夜」で「Sニー」を2回も勝利に導いたモンスター達。その仕組みと制作時の裏話などについて、エンジニア達をまとめた田中章愛さんに実物を見ながら解説してもらった。
──そして、こっちの巨大なのが「電気ケトル綱引き」に参戦した「お茶の魔ケトル MKZ-1300N」ですね。
田中:これは自作の超小型ボイラーが内蔵されています。なぜ超小型なのかというと、もう要するにお題が秀逸だったということなんですが、たくさん水を沸かしても意味ないんですよね。水は少量でよくて、そこからの水蒸気を使ってどうパワーに変換するかがポイントだったので、少量の水を高速・高効率に沸かすために超小型ボイラーの開発が必要でした。
──だからボイラーを自作することになったと。
田中:対戦した2チームは蒸気を回転力に変えてロープを引っ張るという機構だったのですが、われわれの設計は水蒸気のパワーをピストンで直線運動に変換して1回で引き切るという設計でした。サイズが大きいのは大きくしたかったわけではなくて、人間の腕も長さと引っ張る力に関係があるように、力を出しながら勝てる分だけの綱を引くのにこのピストンの長さが必要だったんですよ。
──あれはロマンだなぁと思いましたよ。この例えがいいかどうか分かりませんが、1日1回しかうてない“爆裂魔法”のような設計だと思いました。
田中:設計が固まってからは、とにかくパーツをどんどん作っては試すということの連続で、この辺のパーツ類というのは、電磁弁などどうしようもないもの以外はほぼCreative Loungeで材料を切ったりリサイクル素材を使ったりして自作したものですね。
──消費者として手に取るソニー製品って、それほどメカメカしいものではないですよね。でも、その中身はこうした試行錯誤の結果なんだなと改めて思いました。
田中:今回2つのモンスターはハードウェアもソフトウェアも両方開発しています。当然ですが、現実世界で動くものはソフトだけでは成り立っていなくて、そのソフトが動く「身体」としてのハードも優れていないと突き抜けられないと思うんですよね。ハードが性能を決めて、ソフトがその性能を引き出す。最高性能を引き出すには課題に対する総合的な視点やバランスが大切で、そこにこだわって作っている、ということも今回の魔改造のモンスター開発で見てもらえたことだと思います。
ということで、今回のソニーと『魔改造の夜』の関係、実はここまでのpoiqの連載で、しつこいほどにpoiqのハードウェアとしての良さを話してきたことをつながっていると私は思いました(次回もそんな話をします)。
それにしてもアルクニャンかわいい。そして、poiqもtoioもかわいい。やっぱり家にあるものはかわいくないといかんですね。
ソニー本社「魔改造の夜」展示について
期間:2022年8月29日(月)〜9月14日(水)、10月11日(火)〜(終了日未定)
時間:平日8:30〜18:30
場所:ソニーグループ本社(東京都港区、品川駅港南口から徒歩5分)1Fの展示スペース(https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/data/)
【修正履歴:2022年9月21日17時12分更新 ※一部の表現を修正しました】
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