台風14号被災、テレビは使えずネットは錯綜 あのとき「もっとも頼れた」情報源は:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
今年は9月17日から25日までが俗に「シルバーウィーク」といわれる期間だ。あいだ3日ほど平日を挟むものの、連休が続く。ちょうどそんな休みのタイミングを狙ったかのように、日本列島は台風14号と15号の直撃を受けることとなった。
停電時、一番頼りになったメディアは?
災害情報ソースとしてもっとも役に立ったのが、ラジオであった。防災用に手回し式の充電器が付いたライトにラジオも付いている製品を以前から用意していたが、実際に使ったのは初めてであった。
地元FMである 「JOY FM」(FM宮崎)をずっと点けっぱなしにしていたが、番組は特別編成で、地元の災害状況などをずっと繰り返し放送していた。スーパーマーケットやドラッグストアの開店状況などが分かるのはありがたかった。停電している地域では、営業できていない店舗が相当あったわけだが、これらは実際にそこまで行ってみないと分からないところだ。
普段からおたよりなどでリスナーとコミュニケーションが取れている地元ラジオは、リスナーからの情報を元にウラを取りながら、こうした細かい情報を網羅することができる。
近くの有料道路が通行止めになっているという情報はラジオを通じて初めて知ることとなった。ネットでは、自分から「有料道路はどうなってるのかな?」と調べに行かないと情報が出てこない。だがあらゆることをこちらから検索しに行くには、知恵が足りない。
電気が復旧したのは、午後3時頃だったろう。およそ8時間ほど、停電していたことになる。通電しても、テレビは映らなかった。ケーブルテレビの回線がどこかで断線しているようで、こちらは復旧したのがさらに翌日の昼過ぎだった。約2日ぶりに見るテレビから流れる被害の模様は、実際に映像が見られるのは確かにインパクトがあるが、それは自分達の実生活とは無関係の、災害エンタメでしかないように見えた。
今回の被災で感じたのは、ネットにはかなりの情報があるものの、一元で得られるようなものではなく、あちこちにアクセスしてようやく全体像が分かるといったものでしかないということである。時間がある時はいいが、家族のケアやあと片付けが始まってからは、いちいちネットを検索してはいられない。
テレビは、データ放送で自治体や気象庁の公式発表は確認できるものの、生活密着の情報は得られない。番組は広域の情報を網羅はしているが、「しょせん人ごと」の冷たさを改めて感じさせる。
今回メディアとして認識を新たにしたのは、ラジオである。普段から車に乗る機会も多いのでラジオは比較的よく聴いているほうだとは思うが、なじみのパーソナリティーが長時間励ましてくれるのは、力になった。筆者宅は19日に電気が復旧したが、20日になってもまだ停電している地域があったようだ。これもラジオから知ることとなった。ライブメディアとはこうあるべきという、見本のような放送であった。
現在「日本民間放送連盟ラジオ委員会」では、「民放ラジオ99局 “スピーカーでラジオを聴こう”キャンペーン」を実施している。「スピーカーで聴けば、情報をシェアできる」と言うが、実際に災害と向き合ってみると、1台のラジオから複数人が同時に情報が得られる仕組みは原始的ではあるものの、確かに有用だし効率がいい。今回手回し充電器のラジオを8時間ぐらい点けていたことになるが、バッテリーはほどんど減らなかった。電力効率も優れている。聞き逃したら、radikoは2分ぐらい遅延しているので、そっちでもう一度聴き直すことができるというのは、新しい発見であった。
「ネットさえあれば」と誰もが思いがちだが、SNSはデマも多い。死活問題に直面しているケースで、誰かのイタズラで殺されてはかなわない。最低限の情報ツールとして、「ラジオ」は確保しておくべきであろう。
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