Web3起業家はなぜシンガポールに向かうのか?(1/3 ページ)
このところ、ブロックチェーン関連の起業家、今風の言葉でいえばWeb3起業家の日本脱出がしばしば言われる。その向かい先はどこかといえば、シンガポールだ。彼らはなぜ日本を脱出してシンガポールに向かうのか?
このところ、ブロックチェーン関連の起業家、今風の言葉でいえばWeb3起業家の日本脱出がしばしばいわれる。その向かい先はどこかといえば、シンガポールだ。彼らはなぜ日本を脱出してシンガポールに向かうのか?
シンガポールにオフィスを構え、日系のWeb3起業家を支援するArriba Studioの佐藤崇CEOに聞いた。
ーーWeb3起業家が、日本を脱出してシンガポールで起業する例が増えています。なぜシンガポールなのでしょうか?
佐藤氏(以下敬称略) 投資家側と起業側の両方の話があります。まず投資家側でいえば、日本の投資家はトークンを使った資金調達には応じられません。少なくとも国内で組成したベンチャーキャピタルは投資が難しい。株式への出資の形で投資するケースはありますが、トークンベースの場合は投資できないので、海外の投資家を巻き込んでいく必要があります。
アジア各地で見ると、香港は政治的なリスクが大きいですね。昔は仮想通貨系の会社が多かったが、みんな出ていってしまいました。コロナ禍においては、ゼロコロナ政策に伴う入出国規制も足かせです。台湾もありますが、チャイナリスクがあります。韓国は過去にICOが一切禁止されトークンが発行できなくなったり、規制が厳しくなったり変動する傾向にある国なので、Web3起業家は避ける傾向にあります。
そんな中で、ブロックチェーン系の事業が規制された中国から脱出した、華僑系の起業家たちのハブになっているのがシンガポールです。Web3ブームになる前からブロックチェーン系の会社が集積していました。さらにシンガポールは、中華系のVC、欧米系のVCが拠点にしていて、トークンベースの投資も盛んなので、資金調達のコミュニケーションが取りやすいんです。
また日系企業だと、業務委託で日本人を雇う場合も多いので、時差がほとんどないシンガポールを拠点にするケースもあります。
ーーWeb3事業にとって、日本の税制に難点があるため、シンガポールに出ていくという話を聞きます。
佐藤 本当に税制で考えると、実はシンガポールはベストロケーションではないんです。
Web3事業において日本の税制の課題は2つあるといわれます。1つ目として、トークンの売り出しは日本でもできますが、これは売り上げの先食いになってしまいます。増資のように資本に入るならいいのですが、1億円のトークンを売り出したら売り上げになって税金がかかるのです。
さらに発行して手元に残したトークンも、時価評価して含み益があれば、利益として確定して税金を払わなければなりません。未上場のトークンであっても、今はDEX(分散型取引所)で簡単に取り引きできます。年3回の取り引きでも、最終売買価格が評価額ですと言われる可能性を考えると厳しい。(仮想通貨の時価総額を表示する)コインマーケットキャップとかに載ってしまったら、その価格で時価評価せざるを得なくなります。
シンガポールは時価評価課税はありませんが、発行して売却した分の税金を払うのは、日本と同じです。ただし日本の約30%に対して、シンガポールの法人税は約17%。その17%でももったいないなら、ドバイなど無税の国からの発行にするという方法もあります。
ドバイはクリプト(仮想通貨)の事業特区があって、ドバイ国内との取り引きはできませんが、国際的なWeb3企業の誘致を進めています。
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