「Meta Quest Pro」を「Quest 2」と比べても意味がない 22万円超のVR機器が生まれた理由(3/3 ページ)
米Metaが新VR機器「Meta Quest Pro」を発表した。同社はすでに「Meta Quest 2」を販売しているが、なぜMetaは2つのデバイスを作る必要があったのか。考察してみよう。
業務用には手堅い可能性、他社との競合も継続
もちろん仕事用、という観点で言えば、いわゆる「業務用」のニーズもある。イベント運営や特定用途向けに使う、というパターンだ。これはむしろ手堅い。
Mixed RealityというかAR系の機器は、これまで「業務用」を主軸に作られることが多かった。高コストでありニーズも明確でないためだ。だが、そうした機器を使えばできるビジネスや実証実験もあるのは間違いない。
マイクロソフトの「HoloLens」やMagic Leapの製品、キヤノンの「MREAL」、フィンランドの「Varjo」など、この領域にはプレイヤーも多い。
では、それらが全部Quest Proにとって代わられるのか、というと、それもないだろう。技術的な特徴がそれぞれ異なるからだ。冒頭でも述べたように、「VRやARになにを求めるのか」という要素が定まっていないため、それぞれが目標を定めてハードウェアを開発している。それはそれで正しい在り方だ。
ただ、「この機器でなくてはできない」要素が少ないものの場合、Quest Proは入手性やコストの点で有利になってきそうなので、次第にQuest Proが増えていくだろう、という予測はできる。
これは私見だが、本来マイクロソフトがHoloLensで目指していたものの一部は、Quest Proで実現できたのではないか、という気もする。
マイクロソフトが低コスト化を含めた次期製品の開発に苦慮する一方で、Metaは一気呵成にコストと人をかけて、Quest Proを「高いが個人でも買えないわけではない」価格帯で収めた……というところかもしれない。
そこでマイクロソフトは、自分たちが強い「サービス」「ツール」の部分に再度特化することで、本来やろうとしていた路線を維持できるよう、軌道修正したのではないだろうか。
Quest Proで得られた結果は「未来のマス向け」に組み込まれる
今後の方向性は明確だ。
Quest ProはQuest 2とは別のラインとなり、VR/ARのいろいろなニーズを開拓するために使われていくだろう。そしてその結果は、時間経過と量産によるコスト低減をへて、メインストリームに還元される。数年の間にQuest 2から進化したラインへと反映されていく。そのためにもMetaは2つのラインをこれからしばらく維持・開発していくことになる。
だからぶっちゃけて言えば、Quest Proを多くの人がすぐに買う必要はないし、Quest 2やPICOなどの普及型VR機器と比較するのもあんまり意味がない。
もしかすると、仕事ツールとして評価が高まって「生産性のために買う」人は出てくるかもしれないが、まだそれは可能性の世界の話ともいえる。
だが、Quest Proを買うと「ああ、今後こういう方向があり得るのか」という体験はできる。筆者はQuest Proを予約済みだが、理由はそこにある。そしてそれは、2017年2月に初代HoloLensを33万円で買ったときと同じ発想だ。これは筆者にとっては勉強代である。他人に同じことを薦めはしないが、そういう発想でお金を使うこともまた、必要とされる時がある。
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