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「バブルの終焉!?」市場が動揺したテンセントNFT取引所の閉鎖<中国NFTマーケット事情・後編>浦上早苗の中国式ニューエコノミー(3/5 ページ)

2021年に中国で発行されたNFTは456万点、発行総額は約30億円。26年には市場規模が約6000億円に達するとの試算もある。成長を予感させるNFTマーケットだが、テンセントが8月にマーケットプレイスの閉鎖を発表。「ブームの終焉」が危惧されるなか、業界標準を制定する動きも出てきた。

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譲渡機能なくユーザー失望か

 先行者利益があるはずのテンセントがなぜ有望市場から手を引いたのか。テンセントはサービス終了の理由を、「核心戦略に重心を置くため」と説明した。確かに同社は新型コロナウイルスの再流行と当局の規制強化の逆風を受け、業績が低迷している。8月17日に発表した22年4〜6月期決算は、04年に香港証券取引所で上場して以来初めての減収となった。

 だが、NFTは産業として初期段階にあり、アリババやバイドゥ(百度)など大手がこぞって進出している。見切りをつけるにはあまりにも早く、業界関係者はテンセントの説明を額面通りに受け取ってはいない。

 テンセントが手を引いた最大の理由は、中国政府の規制のため、短期的には収益が見込めないことだろう。前回説明したように、中国のNFTはコレクション目的のデジタルアートで、交換価値を持たない位置づけだ。大手はその原則を順守し、二次流通も厳しく制限している。

 アリババが運営する「鯨探」は、「取得後180日以降」「(モバイル決済アプリの)アリペイでつながっている友人」に限って保有するNFTをプレゼントできるが、テンセントの幻核は、ユーザー間でNFTの無償譲渡すらできない。投資目的のユーザーは失望し、今年6月以降は発行したNFTの「売れ残り」が生じるようになった。

 幻核としても、二次流通のサービスを提供できないなら収入源が発行手数料に限定される。テンセントはメタバースへの投資をかなり早くから行っていると同時に、政府の方針に非常に敏感な企業だ。劉熾平総裁はメタバースやNFTについて聞かれるたびに、「中国の規制は特殊だから」「規制に配慮しながら」と繰り返し、慎重さを崩していない。

 幻核は利用規約で「法律法規、政策によってはテンセントは全てのサービスを終了する可能性がある。その際にユーザーはテンセントに責任を追及できない」と定めている。そもそもテンセントはリスクを冒してまでNFTに参入する意志がなかったのだろう。

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