クラウド活用を妨げるのは“変化を嫌う文化”? SaaS導入が進まない中小の実態 事例を分析(1/3 ページ)
大企業に比べてクラウド活用が進まないといわれている中小企業。実際に中小に勤める人に話を聞くと、その実態が見えてきた。原因として考えられる「有識者の不足」「変化を嫌う文化」について、前後編で分析する。
クラウド活用が進まない中小企業は、どんな課題を抱えているのか。前編では、実際に中小の情シスで管理職を務める友人の話を通して、「情シスの社内カーストの低さ」によりクラウド推進が進まない事例を分析した。
後編では、クラウド活用が進まないもう一つの原因として挙げた「変化を嫌う文化」について考えてみる。IaaS・PaaSだけでなく、比較的特別なスキルが必要ではないSaaSの活用までもが進まない理由も見えてきた。
前編:クラウド活用が進まない中小の実態、原因は“社内カースト”に? 事例を分析
そもそもITリテラシーに不安 「変化を嫌う文化」の背景
「変化を嫌う文化」の下敷きには、社内のITリテラシーの低さがあると友人は話す。例えばコロナ禍に際するテレワーク環境の整備には苦労したという。
友人は当時、会社PCを自宅などから接続させるために、会社PCのネットワーク経路を変更する必要があった。「会社のプロキシサーバ→社内LAN」から「インターネットVPN→会社のゲートウェイサーバ→社内LAN」への切り替えが必要だったという。
そこで経路設定やVPN接続を設定するスクリプトを作成し、バッチファイル化して各社員に配布した。社員はバッチファイルを実行するだけで、自宅から社内LANに接続できる仕掛けを作ったそうだ。
そして集団説明会を開き、マニュアルを配布し作業手順を説明した。会社PCを立ち上げて家庭のインターネット環境に接続し、バッチファイルをダブルクリックするだけなので、難しいところは何もない。マニュアルを作成して、メールで周知でもよいレベルにさえに感じる。
しかし、いざテレワークを開始すると家から会社PCが使えないと問合せが相次ぎ、電話での個別説明に追われる日が続いたという。家庭のインターネット環境に接続し、バッチファイルをダブルクリックさせるだけにもかかわらずだ。なるほど、確かにITリテラシーはかなり低そうだ。
関連記事
- 「ウチは中小だから」でクラウド導入を諦めるのがもったいない理由 今から始めるIaaS・PaaS活用キホンのキ
ITインフラの構築には欠かせない存在になりつつあるIaaS・PaaS。一方で、中小ではまだ利用が進んでいない。しかし、IaaS・PaaSには中小だからこそメリットが大きい面があるという。詳細を専門家に聞く。 - 「アマゾンって通販のやつ?」な“昭和企業”がAWS移行できたワケ 「白い恋人」製造元の情シス奮闘記
「アマゾンって通販のやつ?」が経営層の認識だった、「白い恋人」の製造元・石屋製菓。クラウドの知見に乏しかった同社のAWS移行を成功させたのは、2018年にできたばかりの情シス部門だった。 - オリオンビールがオフィス移転で直面した「サーバ置けない問題」 それでも数カ月でクラウド化できたワケ
オフィス移転によってサーバ室が使えなくなる危機に陥ったオリオンビール。社内システムの移行先にはAWSを選んだが、作業時間は残り数カ月。タイムリミットが迫る中、それでも同社がクラウド化できた理由とは。 - 「他市の教員にうらやましがられる」──小中学校のICT基盤をクラウド化、教員もPC持ち出し可能に 独自施策でAzure移行した埼玉県鴻巣市
「GIGAスクール構想」に先駆けて教育現場のICT化を進め、公立小中学校のシステム基盤をフルクラウド化した埼玉県鴻巣市。教師のワークライフバランス改善や、生徒の学習環境の整備にも貢献したクラウド移行はどのように成し遂げられたのか。 - 「オフィス点検でシステムが止まる」問題にどう挑む? エンジニア不在の電力小売事業者がAWS移行に踏み切った結果
2019年に業務システムをAWSに移行した、電力小売事業者のエコスタイル。社内にIT専任者が不在にもかかわらず、同社がクラウド移行に踏み切った背景とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.