「オフィス点検でシステムが止まる」問題にどう挑む? エンジニア不在の電力小売事業者がAWS移行に踏み切った結果:クラウド事例ウォッチ
2019年に業務システムをAWSに移行した、電力小売事業者のエコスタイル。社内にIT専任者が不在にもかかわらず、同社がクラウド移行に踏み切った背景とは。
連載:クラウド事例ウォッチ
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電力小売事業のシステムを、クラウドサービス「Amazon Web Services」へ2019年に移行した太陽光発電事業者のエコスタイル(大阪市)。これまではサーバを社内に置いて顧客向けシステムなどを運用していたが、オフィスの点検に伴う停電時に、システムを止めなければいけないことが課題になっていた。そこで、東京に置いていた拠点の移転に伴い、AWSに移行したところ、システムの停止時間をゼロにできたという。
エコスタイルは太陽光発電所などを運営しながら、個人・法人の両方に向けた電力小売事業も手掛けている。これまで使っていたオンプレサーバの場合、オフィスビルのメンテナンスに伴う停電時に顧客向けのシステムを止めなければならず、ユーザーはその間、電気の使用量や利用料を確認できない状態だったという。
この問題を踏まえ、エコスタイルは19年11月に予定していた拠点の移転に合わせてシステム移行を検討していた。しかし、移行に向けては課題もあった。社内にIT専任者がおらず、システムの要件が把握しきれていなかったことだ。
エコスタイルのような電力小売事業者は大手の電力事業者に対し、発電量の計画を事前に提出するよう、経済産業省が定めている。この計画と実際の発電量に差があると、大手事業者にペナルティー料金を支払わなければならないという。こういった事態を避けるべく、同社は気象情報など外部の情報を基に電力の需給予測をするシステムを開発し、顧客向けシステムと同じく社内のオンプレサーバで運用していた。
しかし、このシステムは外部のデータを使う都合上、技術的な要件が複雑だった。しかも開発したエンジニアはすでに退職しており、社内のIT専任者は不在のまま。運用自体は経営企画の担当者が引き継いでいたものの、システムの詳細な設計については把握しきれていなかったという。
SIerと協力して4カ月でクラウド移行
そこでエコスタイルは米Amazon Web Servicesの日本法人に連絡。自社のような案件に対応可能なSIerを聞いたところ、フォージビジョン(東京都千代田区)を紹介してもらったことから、2019年8月に同社に移行作業を依頼した。
依頼を受けたフォージビジョンは1カ月かけて旧システムの設計やサーバの台数を調査し、並行して移行計画を作成。その後1カ月半で移行テストなどを進め、エコスタイルが拠点を移転する19年11月までに作業を完了したという。
クラウド移行により、サーバを自社で管理する必要がなくなったエコスタイル。移行後は、オフィスのメンテナンス時に顧客向けのシステムを止める必要がなくなったという。サーバの運用コストがオンプレに比べて3割ほど削減できるメリットもあった。
移行の成果を受け、エコスタイルは電力小売事業用のシステム以外にもAWSのサービスの活用できないか議論を進めている。例えば、IoTデバイスをAWSのクラウドサービスに接続できる「AWS IoT」を使い、太陽光発電所に設置した測定用のハードウェアにトラブルがあったとき、遠隔地から対処できる仕組みを検討中という。
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