AI契約レビューの法的不安は拭えるか? 内閣府ワーキンググループで議論 国のガイドライン要望も
内閣府において「規制改革推進会議スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ」の第2回会合が11月11日に開かれ、AI契約レビューの法的な位置づけについて議論が交わされた。
内閣府において「規制改革推進会議スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ」の第2回会合が11月11日に開かれ、AI契約レビューの法的な位置づけについて議論が交わされた。
AI契約レビューとは、契約書の文面をコンピュータで処理して問題点などを洗い出し、契約審査の補助をする仕組み。国内でも複数社がサービスを提供しており、導入企業も増加しつつある。
ところが6月6日に公表された「グレーゾーン解消制度」において、AIを使った契約レビューについて「弁護士法第72条に違反すると評価される可能性がある」という回答が公表されたことが波紋を呼んだ。弁護士法72条とは、弁護士以外が法律事務を取り扱うことを禁じる法律だ。
AI契約レビューを提供するLegalForce、リセ、GVA TECH、MNTSQの4社は「AI・契約レビューテクノロジー協会」を9月に設立(記事参照)。協会は本ワーキンググループにも参加し、「人間の弁護士が行うレビューとは構造が根本的に異なっている」と主張。「大量の契約書データを機械学習にかければ、ソフトウェアが勝手に賢くなり、勝手に正確に契約書をレビューしてくれるようになる」というのは誤解だと、資料で述べた。
また弁護士ドットコムは、適法な領域について体系的なガイドラインを要望した。弁護士法人または弁護士のみの利用に限定した場合や、無償提供の場合の適法性を示してほしいとしている。弁護士法72条は報酬を得る目的の取り扱いについてのみ禁じている。
AI契約レビューの研究を行う有識者である渡部友一郎弁護士は、「民間のガイドラインよりも、国のガイドラインの整備が望ましい」という見解を資料で述べた。
ワーキンググループの座長である実業家の御手洗瑞子氏は、「法務業務の進展は大企業だけでなく地方の中小企業にも役立つもので、安心安全に利用できる環境整備が必要だ。弁護士法の適用範囲について、法務省にガイドラインの用意をお願いしたい」とまとめた。
関連記事
- AIの契約レビューって違法なの? AI・契約レビューテクノロジー協会設立、適法性を発信
AIを使った契約レビューサービスを提供する主要4社が共同で、「AI・契約レビューテクノロジー協会」を設立した。AIによる契約レビューが弁護士法72条に違反するのではないかという懸念に対し、現状の各社サービスが適法であることを社会に発信していく。 - 法務向けSaaSのLegalForceが137億円の資金調達へ 採用・営業など強化
法務向けSaaSを提供するスタートアップのLegalForceが、137億円の資金を調達すると発表した。引受先は米Goldman Sachsなど。資金は営業活動や採用、サービス開発の強化に充てるという。 - ディープラーニングに向くのは「100点を取らなくていい現場」 東大・松尾研発のVC代表が語る“AIの狙い目”
ディープラーニング技術を開発・提供する企業に特化して投資するベンチャーキャピタル・Deep30代表の田添氏が、ディープラーニングに向いている領域やその可能性などを語った。 - 「画像生成AIと著作権」のオンラインセミナー、11月に開催 参加費無料 AIに詳しい弁護士が登壇
STORIA法律事務所は、「画像自動生成AIと著作権」についてのオンラインセミナーを開催する。AI・データ法務などを専門分野とする同事務所の柿沼太一弁護士が登壇する。開催日は11月15日午後5時からで参加費は無料、開催プラットフォームは未定。 - 絵師の“AI学習禁止宣言”に意味はあるのか? AIに詳しい弁護士に聞いてみた
AIイラストメーカー「mimic」の出現以降、Twitter上では自分の絵について“AI学習禁止宣言”をする人たちが現れている。このような宣言をすることで、AI学習への利用を禁止できるのか? AI領域の法務に詳しい柿沼太一弁護士に話を聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.