マネーフォワード クラウド会計 vs. freee会計(前編):クラウド会計SaaS対決(3/3 ページ)
クラウド会計という分野では必ず比較されるMFクラウドとfreeeであるが、「会計ソフト」という言葉で一括りにすることができないほど、思想や世界観は異なっている。本稿では両者の機能比較に加えて、その背景にある思想やターゲットなどをひも解いていく。
普通の会計ソフト
2つ目の特徴は、あくまでも通常の会計ソフトを忠実にクラウド上で再現したことである。収入と費用を入力し、集計する家計簿アプリと比べると、会計ソフトは遥かに複雑な機能が必要だ。
貸借対照表、損益計算書などの財務諸表に加えて、総勘定元帳、仕訳帳などの特殊な帳票も出力する必要がある。また確定申告を行うために、申告ソフトやe-Taxに対応した形でのデータの出力機能も必要だ。マネーフォワード社の創業メンバーは決して会計の専門家というわけでもなく、家計簿アプリの延長線上で対応できるものでは決してない。ゼロから会計ソフトを構築していく際には相当の苦労があったと思われる。
後述するfreeeともよく比較されるポイントだが、私はMFクラウドを「完全にブラウザだけで動作する普通の会計ソフトです」というふうに紹介している。決して馬鹿にしているわけではない。会計ソフトのような複雑なシステムを完全にクラウド上で構築し、かつ、普通の会計ソフトと遜色がないというのは素晴らしいことである。
普通の会計ソフトであるため、活用するためには当然に貸借の概念や勘定科目、仕訳の理解など簿記の基礎知識が不可欠である。WordやExcelのようにソフトを立ち上げれば誰でも使えるというものではないが、それでもクラウド上で利用でき、銀行やクレジットカードの明細が取り込めるというだけで、他の会計ソフトと比べると大きなアドバンテージがある。特にほとんど会計ソフトがMacには非対応であるが、ブラウザ上で動作するMFクラウドにはその制約がないため、クリエイティブ系の業務を行う個人事業主や企業にとっても心強い存在だ。
また、UIや構造も会計ソフトの仕様を踏襲しているため、他の会計ソフトからの乗り換えも容易である。会計ソフトなどの、すでに用途が確立した分野への新規参入において、普通に使えるということは非常に大事なことなのだ。
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