“けもみみ”の動きと感情の関係、電通大が調査 3Dモデルの球体に耳を生やして検証:Innovative Tech
電気通信大学野嶋研究室に所属する四條らの研究チームは、「獣の耳」(けもみみ)の動的姿勢とそれが与える感情を調査した研究報告を発表した。けもみみの動きによって、その動作を見ている者がどのように感じるかを調査した。
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このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
電気通信大学野嶋研究室に所属する四條らの研究チームが発表した論文「Research on the Emotions Expressed by the Posture of Kemo-mimi」は、「獣の耳」(けもみみ)の動的姿勢とそれが与える感情を調査した研究報告だ。けもみみの動きによって、その動作を見ている者がどのように感じるかを調査した。
けもみみは動物の耳を意味し、アニメや漫画でよく使われる言葉である。また人型キャラクターが持つ犬や猫のような耳のことも指す。
犬や猫の耳は人間の耳とは異なり、正面から横へ回転したり、直立したり、伏せたりと自由自在に動かすことができ、周囲の情報を収集するために使用される。また耳の動きは動物の意思や感情を表すと理解されている。よって、動物とコミュニケーションをとる際の耳の姿勢を見ることで、その動物の感情を推定できる可能性がある。
動物の耳は人間に動物の印象を与えやすいため、VRChatなどのVRソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で使用するファッションアイテムとしてアバターに動物の耳を付けることが見受けられるようになった。このような状況では、けもみみを付けた人型キャラクターは、単にけもみみを付けた人間ではなく、耳の動きによってキャラクターの感情を表現できる人間となる。
この研究では、けもみみの姿勢とその姿勢によって表現できる感情との関係を調査する。調査のため、球体に耳が生えた制御可能な3Dモデルを作成した。標準姿勢は、垂直方向から20度横に傾いた姿勢とした。
対象となる姿勢は全部で18姿勢で、これらの姿勢は動物の耳の動きの各方向の9パターン、2つの動作速度の組み合わせである。耳は前後45度、内側20度、外側40度に傾き、90度の回転、移動速度は30度毎秒と150度毎秒でアニメーションされる。
実験では、動いた先で止まる動的姿勢と繰り返し連続して動く動的姿勢に分けて実施した。この2つの姿勢は、実際の動物やアニメ・漫画作品の表情が元になっている。例えば、リラックスした感情や恐怖を感じる感情などは耳が姿勢を保つことで表現されるが、うれしいや興奮といった感情は耳の動きの繰り返しによって表現される。
参加者には、提示した動的姿勢に対応する18の感情語リスト(疲れ、恐れ、やすらか、退屈、眠い、悲しい、興奮、喜びなど)の中から選択してもらった。世界各国で参加者を募ったが、参加者は全員日本人であった。
実験結果から、感情を表現するためのけもみみの動かし方が明らかになった。
- 耳を前に倒す、または低速で外向きに回転させることで、悲しみや恐れなどの快感の低い感情を表現できる。
- 後ろに傾けたり、両耳を寄せたりすることで、覚醒の高い感情を表現できる。
- 動きの速さは感情の覚醒要素に影響し、速い動きはより高い覚醒を、遅い動きはより低い覚醒を表現する。
- 動物の耳が後方に傾く場合、驚きを表現できる。
- 耳が外向きに回転しながら後方や側方に傾く素早い反復姿勢の場合は、興奮を表現できる。
動画はこちらから
Source and Image Credits: Ryota Shijo, Sho Sakurai, Koichi Hirota, and Takuya Nojima. 2022. Research on the Emotions Expressed by the Posture of Kemo-mimi. In 28th ACM Symposium on Virtual Reality Software and Technology (VRST ’22). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 2, 1?5. https://doi.org/10.1145/3562939.3565610
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