テラ、セルシウス、FTXの3大ショック 価格3分の1になった2022年の仮想通貨業界を振り返る(2/2 ページ)
2022年は仮想通貨業界にとってはたいへん厳しい年となった。テラショック、セルシウスショック、FTXショックの概要を振り返るとともに、ビットバンクの廣末紀之社長に業界の今後を聞く。
FTX破綻は機関投資家に影響
FTXの破綻はずさんな経営が原因であり、仮想通貨の根幹のメカニズムに問題があったわけではない。しかし、業界に及ぼす影響は大きそうだ。
20年から始まった仮想通貨の上げ相場を牽引したのは、北米の機関投資家だ。ところが今回、仮想通貨ファンドに限らず、セコイアやソフトバンクグループなどのベンチャーキャピタル、さらにはカナダのオンタリオ州教員年金基金などもFTXに投資しており、大きな損失を被った。
本来保守的に運用すべきお金が失われたことで、運用者の受託責任を問う声も上がっている。FTXが規制の緩いバハマ籍で運営されていたとはいえ、出資した機関投資家のいずれも取締役を送り込んでいない。ガバナンス強化などの規制が完了するまでは、機関投資家は仮想通貨への投資を控えざるを得ないだろうというのが廣末氏の見立てだ。
個人投資家も影響を受けた。FTXはトレーダーに支持されて規模を拡大してきており、大口投資家ほどFTXを利用していた。
巨額のマネーを動かしていた機関投資家や大口投資家の動きが止まることで、Web3など仮想通貨関連のスタートアップにも影響が出そうだ。「この産業へのリスクマネーが急速に絞られてくる。Web3産業の阻害要因になる」(廣末氏)
FTXの国内子会社であるFTX Japanについては、「日本法人の資産が米国のチャプター11から守られるかどうかが焦点だが、今のところは大丈夫だろう。出金にかかわるシステムの操作権限が国内になく時間がかかっているようだが、日本人顧客の資産は保護されそうだ」と廣末氏は見解を話す。廣末氏は、FTX Japanも会員となっている日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の会長でもある。
【追記訂正:12/8 廣末氏は日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の会長、日本暗号資産取引業協会JVCEAの理事となります。お詫びし訂正いたします。】
米国を中心に規制強化の動きは避けられなさそうだ。FTXにかかわる交換業と自社トークン、セルシウスのようなレンディング、テラUSDのようなステーブルコインなどが焦点となると見られる。
規制は議論が始まってから実施されるまでに、どうしても時間がかかる。そこまでは仮想通貨の冬の時代は続くだろうというのが廣末氏の見立てだ。「センチメントが戻るまではどうしても時間がかかる。1〜2年くらいはかかるだろう」
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