テラ、セルシウス、FTXの3大ショック 価格3分の1になった2022年の仮想通貨業界を振り返る(1/2 ページ)
2022年は仮想通貨業界にとってはたいへん厳しい年となった。テラショック、セルシウスショック、FTXショックの概要を振り返るとともに、ビットバンクの廣末紀之社長に業界の今後を聞く。
2022年は仮想通貨業界にとってたいへん厳しい年となった。仮想通貨取引所「bitbank」を運営するビットバンクの廣末紀之社長は「非常にひどい1年だった」と振り返る。
世界的なインフレが起こるなか、世界各国で急速な金融引き締めが起き、リスクマネーから資金が逃避した。追い打ちをかけるように、テラショック、セルシウスショック、FTXショックと、大規模な事件が続いた。
結果、年初4万600ドル(約544万円)だったビットコイン(BTC)は、65%下落し、12月7日現在は1万6746ドル(約229万円)まで値下がりしている。
この1年で、いったい何が起きたのだろうか。
テラ、セルシウス、FTXの3大ショック
まず5月に起こったのが、ステーブルコインテラUSDの崩壊だ。これは韓国のテラフォームラボの仮想通貨「ルナ(Luna)」が、一夜にして崩壊し価値がゼロになった事件。同社はルナを裏付け資産として、テラUSD(UST)を提供していた。ところがテラUSDの米ドルとの連動が外れ、裏付け資産であるルナの価値も暴落。いわばデジタル版の取り付け騒ぎがおき、破綻した(詳細記事)。
いわゆるアルゴリズム型のステーブルコインだったテラUSDの失敗は、業界に連鎖していく。
6月に起きたセルシウスショックは時価総額第2位の仮想通貨、イーサリアム(ETH)に関係したものだ。分散型金融と呼ばれるDeFiの1つ、「Lido Finance」にイーサリアムを預けると、代わりにイーサリアムを裏付けとする「stETH」(債券に相当するトークン)を入手できる。ETHとstETHの価値は連動しているはずだが、テラUSD崩壊後、ETH/stETHの価格が乖離し始めた。
問題が起きたのが、stETHを担保とした借り入れだ。stETHの価値が下がると担保が強制的に精算されるリスクがある。仮想通貨を預かったり貸し出したりするレンディング業者の1つセルシウスは、stETHの大規模なポジションを保有しており、精算リスクの波及を防ぐために、取引の一時停止を行った。結果、セルシウスの支払い不能が危惧され、仮想通貨全体の価格が大幅に下落した。
そして11月に起きたFTXショックだ。世界最大規模の仮想通貨取引所であるFTXは、1兆2000億円を超える負債を抱えて破綻した。ただし、こちらは仮想通貨の構造的な課題というよりも、企業ガバナンスの問題だ。
FTXの姉妹企業であるアラメダ・リサーチの資産は、FTXが発行したトークン「FTT」を担保とした借り入れがほとんどを占めていたことが発覚。競合の仮想通貨取引所であるBinanceが保有するFTTの売却を発表したことで、価格が暴落した。FTXに対する信用不安から、わずか数日でチャプター11を申請し破綻した。FTXは顧客資産をアラメダ・リサーチに流用して投資をしていたことも明らかになり、ガバナンスの不備が指摘されている。
FTX破綻への流れ。信用不安から取り付け騒ぎとなり実際に破綻という流れ。顧客資産の不正流用が要因ではあるが、わずか数日で一気に破綻に追い込まれたというスピード感と、中央銀行のような「最後の貸し手」が存在しないという仮想通貨業界の課題も浮き彫りとなった
「FTX破綻は、『これで仮想通貨業界は終わったか』と思うくらい暗いムードだった11年のマウントゴックス破綻に匹敵するほどの精神的インパクトがある」と廣末氏。ただし、FTXは技術的な問題ではなく、FTX個社の話だ。「ガバナンスの不在、それにまつわる規制が不十分だったことが、問題の根幹にある」(廣末氏)
FTXが支援していたレンディング企業BlockFiも連鎖的に破綻するなど、FTX破綻の影響は各所に波及しているが、「大きな峠は超えてきている」と廣末氏は見る。
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