富士フイルム「X-T5」はスチル撮影に軸足を置いたハイエンド機:荻窪圭のデジカメレビュープラス(5/5 ページ)
「X-T5」は予想以上にX-Tだった。動画寄りの「X-H2S」「X-H2」に対し、静止画に軸足を置いたカメラとして設計され、操作系もそっち寄り。写真メインの人にはありがたいのだ。
動体撮影も問題ないが、全体としては速さよりクオリティーを重視したカメラだ。
その分、高画素機にのみ搭載されるスムーススキンエフェクトや、富士フイルムならではのフィルムシミュレーション、ダイナミックレンジ補正などなど細かい画作りに関しては設定項目が非常に多い。
さてX-T5と組み合わせたいレンズだが、クオリティー重視でハイエンドのレンズを使うか、ボディの小型軽量さを活かすべく機動力重視のレンズを使うか。
今回は機動力重視でいこう、ということで、野鳥など望遠作例はXF 70-300mmを使って手持ちで撮影してる。これは軽くてコンパクトなのがいい。
X-T5と同時に発表された、XF 30mm Macroは35mm判換算で46mm相当と標準レンズの画角としても使えるし、等倍マクロとしてもいい。鏡筒が細くてコンパクトなのでスナップ用としてもおすすめできる。
マリーゴールドの花にショウリョウバッタ(にしては小さかったのだけど)を見つけたのでマクロレンズで撮って見た。4000万画素でマクロレンズで虫を撮るのは楽しい(30mm 1/240秒 F5.6 +1.3 ISO125)
人物作例に使ったXF 50mm F2も廉価でコンパクトながら写りは非常によいので、ポートレート用としていい。
ただ、標準ズームレンズとして何を使うかは悩ましいかも。
18-55mmがレンズキットとして設定されているが、これはコンパクトであるもののXシリーズ初期からのいささか古いレンズ。今回は比較的新しく35mm判換算で24-120mm相当という便利な16-80mm F4を使用した。
ではまとめよう。
X-H2/H2Sがフラッグシップとして登場したが、X-T5が主力モデルであることに変わりはない。むしろ、フラッグシップ機としての役割をX-H2/H2Sが担ってくれたおかげで、X-T5は原点に帰れたといっていい気がするほどだ。
4つのダイヤルを回すというアナログな操作で露出を決め、被写体検出AFやフィルムシミュレーションなどデジタルを駆使して作品を撮る。そんな面白さが詰まっているのがX-T5なのだ。
これで富士フイルムのAPS-Cサイズセンサー搭載Xマウントミラーレス一眼は2本のラインに明確に分かれた。
1つが静止画と動画の両方に軸足を持ちモダンな操作系のイマドキのカメラX-H2/X-H2S、さらにはエントリーモデルとなるX-S10というライン。
もう1つはPhotography Firstの写真撮影がメインで伝統的な操作系を持つ趣味性が強いX-T5、「X-Pro3」、さらにはエントリーモデルとなる「X-E4」や「X-T30 II」のラインだ。
X-T5でも普通に動画を撮れるけど、本格的に映像作品を作るならX-H2やH2Sの方が良いと思う。
あとは自分にあったものを選ぶべし。
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