結局、紙で保存でOKなのか? 電子帳簿保存法がアップデート 売上高5000万円以下は検索要件不要に(2/2 ページ)
2022年末に公表された政府の「令和5年度税制改正大綱」では、電子帳簿保存法をさらに緩和するアップデートが盛り込まれている。
中小零細ならば電子保存も容易に
もし「相当の理由」がなくても、中小企業や個人事業主については別の緩和も行われた。電帳法では電子データで受け取った書類について、後の税務調査などがスムーズに行えるように保存法が細かく定められている。その一つが、こういった条件で検索できるようにしなさいという検索要件だ。
- 日付、金額、取引先の3つの項目で検索できること
- 日付、金額は範囲を指定して検索できること
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること
メールなどで受け取った電子データは、そのままではこの条件に沿った検索が行えない。そのため、専用のSaaSを導入するなどせざるを得ず、それが負担とされていた。
ところが令和5年度税制改正大綱では、売上高が5000万円以下の場合、検索要件が不要とされた。もともと1000万円以下だったものが、対象が拡大した形だ。
「PDFでフォルダに保存でも、必要なときにダウンロードして渡せばOKとなった」(柘植氏)
これにより、中小零細や個人の場合は電子データを消さずに保存しておけば、ひとまず電帳法へ対応できることになる。
無理のない範囲でDX化を
21年に話題になったときの電帳法は、電子保存以外は認めない、保存の方式はこれ、とかなり厳しい要件を求めたことが裏目に出た。多くの企業は紙を原本として管理していたが、電帳法が施行されると電子データを印刷して管理できなくなる。紙と電子データの二重管理を嫌い「電子データでもらうと管理がやっかいなので、相手企業に紙での請求書発行を依頼する」企業も出ていた。電子化を促すための法律のはずが、本末転倒の事態となっていたわけだ。
21年末の宥恕措置、また22年末の猶予措置といった緩和によって、対応のハードルはかなり下がった。「今回の緩和は、各企業に合ったやり方で、無理のない範囲で進めていけるようにしようというものだろう」と柘植氏は見る。
大企業は宥恕措置にかかわらず電子化を進めており、Sansanが行った調査では「電帳法に対応したことで、業務効率のアップなどメリットのほうが大きいと感じた」企業が半数を超えた。
一気に電子化を推し進めるという方針はトーンダウンしたが、電子化は避けて通れない道だ。各企業は順次、対応が必須となるだろう。
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