“生徒1人に1台”配布のGIGAスクールPC、スペックに不満は? 教育委員会の9割が「十分」 MM総研調査
「GIGAスクール構想」で配布されたPCは、十分な性能を備えているか──MM総研が調査結果を発表。教育委員会に聞いたところ、回答者の92%が「十分に備えている」「備えている」と答えた。
「生徒1人にPC1台」を掲げる文部科学省の「GIGAスクール構想」。配布されたPCは、十分な性能を備えているか──MM総研は1月23日、こんな調査結果を発表した。各自治体の教育委員会に聞いたところ、回答者の92%が「十分に備えている」「備えている」と答えた。
残り8%は「あまり備えていない」と回答。PC本体に加え、UIやタッチペンなどの周辺機器に対する課題があったという。
各教育委員会に対し、PCの具体的な用途を複数回答で聞いたところ、最も多いのは「学習支援ソフトやアプリの利用」と「調べ学習」(69%)だった。3位は「考えをまとめて発表」(61%)、4位は「デジタル教科書・ドリル」(51%)、5位は「カメラ機能で動画や写真を撮る」(50%)と続いた。他には「生徒と児童・生徒のやりとり」(44%)、「児童生徒同士のやりとり」(32%)もあった。
PCの用途については自治体あたり平均3.8件の回答があった。21年10月の調査では1.7件だったことから、MM総研は「端末利用の幅も広がっている」としている。
一方で、PCを活用した教育そのものにはまだ課題もあるようだ。GIGAスクールに関する課題を教育委員会に複数回答で聞いたところ、「教員のICTスキル」(61%)が最上位だった。2位は「家庭にインターネット環境がない」(20%)、同率3位は「教員のモチベーション」と「学校の通信整備状況の悪さ」(いずれも17%)だった。
教員にも同様の質問をしたところ、「教員のICTスキル」(61%)がトップに変わりないが、それ以降に違いがあった。2位は「児童のリテラシーやモラル不足」(38%)、3位は「教員のモチベーション」(32%)だったという。
双方で1位だった「教員のICTスキル」への対応についても、教育委員会と教員で認識の差があった。教育委員会は「対応が取れている」の回答が95%だったが、教員では40%にとどまった。MM総研は「現状の教員ICTスキルアップ施策がうまく機能していないと考えられる」と分析している。
調査は2022年12月に実施。1141の教育委員会と、国立小中学校の教員1200人にアンケートを取った。
関連記事
- 「職員室でしかPCが使えない」 “生徒1人にPC1台”の裏で、進まぬ教育現場のデジタル化 意識改革が必要なのは誰なのか
“生徒1人にPC1台”施策の裏で、まだ進まない教育現場のIT活用。実現に当たって意識改革が必要なのは教師か、教育委員会か、自治体か。問題の本質を教育現場や有識者への取材から探る。 - 使いたいときにHPCが使えない──研究者の悩み、クラウドで解決できたワケ ゲノム解析の現場を救ったAWS活用
HPCが使いたいときに使えない──「ゲノム研究」に当たって課題を抱えていた基礎生物学研究所。解決の糸口はAWSのクラウドサービスだった。 - “1人1台”で放置される学校の「コンピュータ教室」 それでも文科省が残したい理由
GIGAスクール構想により、1人1台端末があればもうコンピュータ教室に移動してPCを使わなくていいだろう。と、コンピュータ教室を廃止する自治体が出始めている。だが12月19日、文部科学省が通知を出した。コンピュータ教室を廃止するのは待て、という話である。それはなぜか。 - 「誰でも使えるシステムがすぐ必要だった」 オンライン授業迫られた文系大学の奔走 タイムリミットは2週間
新型コロナウイルスの影響を受け、オンライン授業の実施を迫られた小樽商科大学。教員内のITリテラシーに格差があり、シンプルで安価な配信システムを2週間で構築する必要があった。 - 近畿大、電話システムの一部をクラウドに移行 職員のPC通話とBYODもスタート
近畿大学東大阪キャンパスが、事務部門にクラウド型のPBXシステムを導入。同システムを活用し、職員のPCでの通話と、私用スマホでの内線利用を開始している。今後は同キャンパスのフルクラウド化を目指すという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.