トヨタ社長交代、なぜ豊田章男氏はトップの座を降りたのか 語った「クルマ屋の限界」とは(2/2 ページ)
トヨタが社長交代する。4月1日から、現レクサスとGRのトップを務める佐藤恒治氏が社長に、現社長の豊田章男氏は代表取締役会長に就任。交代の理由として豊田氏から語られたのが「クルマ屋の限界」というフレーズだった。
なぜこのタイミングでの交代なのか
なお、佐藤氏によると社長の内示が言い渡されたのは、2022年末にタイで行われた耐久レースの現場。豊田氏から「ちょっとお願い聞いてくれる? 社長やってくれない?」と唐突なものだったという。両氏は、マスタードライバーとクルマ開発者として同乗したり、現場のメカエンジニアと一緒にいる場面が多く、社長室などではないレース現場での内示は、その延長線上だったと豊田氏は振り返る。
また、このタイミングで内示を出した件について豊田氏は、初代プリウスのチーフエンジニアであり、現会長の内山田竹志氏の退任意向と、13年かけて作り上げた「土台」も関係するという。
内山田氏は「今のチームはうまく行っているが、その状態で1年1年過ごしていって、この変革期に新しいモビリティー、カーボンニュートラルが実現できるのか。75歳という物理的年齢が見えてきたのが大きなきっかけの一つ」と語る。豊田氏は当初、会長就任に乗り気ではなかったようだが、話し合いの末、後任を申し出たという。内山田氏は「(豊田氏には)日本の産業界全体に大きく羽ばたいてもらいたい。そのためにはトヨタ自動車の会長という役割にふさわしいものがセットであるべき」と語った。
豊田氏は社長就任直後から、リーマンショック、赤字転落、米国でのリコール騒動、東日本大震災が次々に降り掛かった。この危機を乗り越えるべく、内山田氏とともに商品経営と地域を軸にした経営にシフト。TNGAプラットフォームの開発、カンパニー制の導入を実施し、それまでの画一的な「グローバルマスタープラン」ベースのクルマづくりから、各国の地域ごとに最適な車種を投入できるようにした。結果、社内体質の刷新とともにメンバーの意識も変わり、提案の軸にブレがなくなったという。こうした“メンバーづくり”に加え、トヨタの思想を明文化した指針を整備するなど、次世代にバトンを渡す土台をようやく築けたとしている。
ハイブリッドで電動化時代を切り開いたトヨタだが、EVに限っていえば諸外国から遅れを指摘されることも増えている。同社はハイブリッド、FCV、PHEVなどフルラインアップで各国のエネルギー需要に応えると宣言しているが、激動の自動車業界で10年後もトップランナーであり続けられるのか、佐藤氏を含む新チームの手腕が試される。
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