「Dropbox」と「Box」、老舗クラウドストレージを企業があえて使い続ける納得の理由:クラウドストレージSaaS比較(4/4 ページ)
今回のSaaS対決では、クラウドストレージを祖業とする両社が、なぜ競争が激化するマーケットにおいて生き抜いてこれたのか、両社の強みはどこにあるのかを掘り下げていく。
GoogleDriveやOneDriveでなく、わざわざDropboxやBoxを導入する理由
クラウドストレージは、単に「クラウドにファイルを保存する」「各端末からスムーズにファイルを編集する」という部分ではコモディティ化が進んでしまい、差別化を図ることが難しくなっている。保存できる容量も各社がどんどん増やしており、容量の多さが選択理由になることも少なくなってきた。DropboxやBoxが登場してから15年以上が経過し、当初アピールしていたクラウドストレージの利便性は今では当たり前のものになってしまっている。
では、すでにGoogle WorkspaceやMicrosoft365を契約している企業が、パッケージに付属しているGoogleDriveやOneDriveを使わずにわざわざDropboxやBoxを導入する理由はなんなのだろうか。主には、管理者向けの機能とファイル共有機能の2点にあると筆者は考えている。
セキュリティ上はほぼ意味がないといわれているPPAP(パスワード付き添付ファイルを送った後、別途パスワードを送る手法を揶揄した言葉)がいまだに幅をきかせている日本ではあるが、ひとたび情報流出が起これば企業に甚大な損害をもたらすことは言うまでもない。
クラウド上でのファイル保存が当たり前になった現代において、誰がどのファイルにアクセスできるのか、どのような操作をしたのかを監視でき、かつ、細かい操作権限をユーザーごとに付与できる機能の重要性は高まっている。GoogleDriveやOneDriveは単にファイルを保存して共有するだけなら問題ないが、管理機能がDropboxやBoxと比べるとかなり見劣りする。
また、社内のストレージのセキュリティがどれだけ高くても、メールやチャットを通じてファイルを添付して外部に送信するやり方には多くのリスクが伴う。
Dropboxには「Dropbox Transfer」というファイル共有に特化した機能があり、この機能を通じて発行された共有リンクには有効期限を設定したり、パスワードで保護したりでき、かつ、ダウンロード通知により受信を確認できる。
Boxも共有リンク発行の際に有効期限やパスワードを設定することができ、プレビューしか見れないユーザーなども招待できる。PPAPのようなリスクがある手法でファイルを送るのではなく、クラウドストレージ上に保存されたファイルをいかに簡単で安全に共有するかという部分の利便性では、この2つのサービスに軍配が上がる。
ファイルの共有があまりにも簡単にできるようになったため、会社側としては操作ミスによる情報流出のリスクを常に抱えている。チャットやオンライン会議など、デジタル上で業務を行う比率が増えれば増えるほど、クラウドストレージを従業員が便利に使いながら、企業側がしっかりとコントロールしたいというニーズは増加している。情報システム部門があるような規模の会社が、クラウドストレージサービスを導入する際に必要な機能をDropboxとBoxはしっかりと提供しているのである。
機能面や使い勝手での甲乙は付けがたいが、Boxの方が長い間法人特化でサービスを提供してきた分だけ、管理者向けの機能が充実しており数万人の従業員がいる大企業の要求にも応えられるようになっている。
一方のDropboxは、素早く同期を完了させたり、頻繁にアクセスするファイルのみを同期したりといった部分に磨きをかけた。クラウド保存とローカル保存のいいとこ取りで、新幹線や飛行機などの安定的な高速回線を確保することが難しい場所でも、ストレスなく仕事ができる。
企業規模や業種はもちろん、どのような場面で活用することを想定するかによってどちらのサービスを選ぶべきかは変わる。GoogleDriveやOneDriveの機能に不満があったり、社内のファイル管理にリスクを感じている場合はしっかりと比較検討した上で導入してもらいたい。
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