SBG、7834億円の赤字 孫社長に代わり”後藤くん”は何を語ったか
2月7日に行った第3四半期(10−12月)決算説明会には、孫社長の姿はなく、後藤芳光CFOを中心とした財務系のメンバーが発表を行った。
「今後の経営については守りに徹する。ソフトバンクグループが守りを固めるには、私よりも後藤くんが中心になるのが適切である」。2022年11月に行った、23年3月期第2四半期決算説明会の冒頭で、ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義社長はこう切り出した。
その予告のとおり、2月7日に行った第3四半期(10−12月)決算説明会には、孫社長の姿はなく、後藤芳光CFOを中心とした財務系のメンバーが発表を行った。
SBGの第3四半期の純利益は7834億円の赤字。10-12月期としては、過去最大の赤字額だが、第1四半期が3.1兆円の赤字、第2四半期が3兆円の黒字というジェットコースターのような状況下だ。第1四半期からの通算は9125億円の赤字となった。
ソフトバンクビジョンファンドは、累計でも9000億円近いマイナスに
赤字の源は、ソフトバンクビジョンファンド(SVF)だ。第3四半期までの合計で、投資損益は5兆円のマイナス。そこにアリババ株の売却による株式再評価などで3.5兆円のプラスを計上し、投資損益全体では1.3兆円の赤字に収めた。
第3四半期だけでも、SVFの損失は51億8500億ドル(約6880億円)に上っている。SVFスタートからの累計でも、66億4500億ドルの損失に沈んだ。
「SVFが5兆円の損失、それが拡大している」(後藤CFO)
SBGは投資会社であり、投資先の評価額の変化がそのまま赤字、黒字となって現れてくる。2年連続の赤字を避けるには、第4四半期が1兆円近い黒字にならなければいけないが、自助努力で業績が改善できるものでもない。「環境は非常に不安定な状況が続いている。特に株式市場は不安定な時期。改善しつつあるが楽観視はできない」と後藤CFOは言う。
Armの再上場に強い決意
そんな中、もう一つの業績の柱がArmだ。米NVIDIAへの売却が頓挫した後、Armは23年中の再上場に計画を切り替えた。これが叶えばSBGは大きなリターンを得られる目算だ。
「 (上場先市場としては)ナスダックもニューヨークもロンドンも検討している。IPOには、armも準備できていなければならないし、市場も準備していなくてはならない。23年中の上場に強い決意を持っている」とArmのIR担当副社長イアン・ソーントン氏は話した。
「守りを固める」
後藤CFOは、決算発表の冒頭から最後まで「守りを固める」と繰り返した。良くも悪くも、孫社長が本人も言うような“大ぼら吹き”なのに対し、保守的に規律をもって財務を固めるのが後藤CFOだ。
今期も赤字になるか? と業績見通しについて聞かれ、孫社長ならば「いかに盛り返すか、次の一手はこれだ」と聞いている人たちを期待させる言葉を発したかもしれない。
しかし後藤CFOが話したのは「投資会社はどうあるべきか。次の四半期について目安は立てるが、投資先の状況を保守的に見ていくことが重要だ。少しでも危ないと思ったところを保守的に評価するほうが、投資会社のマネジメントとしては正しいと思っている」という持論だった。
巨大な赤字が続くSBG。こうした時期の決算発表には、「守りは盤石、ここにはいささかの問題もない」と語る後藤CFOが適任なのだろう。
関連記事
- 孫正義氏、Armに注力へ 決算会見に今後登壇せず 「爆発的成長に私は没頭する」
ソフトバンクグループ(SBG)は11月11日、2023年3月期第2四半期決算を発表した。質疑応答含め決算会見で自らプレゼンを披露してきたSBGの孫正義氏だが、今期の決算会見限りで壇上を降りると明らかにした。 - SBG、“過去最大の赤字”3.2兆円 孫会長、トーン低く「実態の悪さを正直に説明」
ソフトバンクグループの2023年3月期第1四半期連結業績は、四半期損益が3.2兆億円の赤字だった。孫会長は暗い声で「実態が悪いということを正直に正面から説明すべき」と切り出し、投資を厳選する方針を示した。 - 再びIPOに向かうArmの明日はどっちだ? NVIDIAへの売却失敗で詰腹切らされた前CEOを惜しむ
Armの動向に詳しい大原雄介さんに、ソフトバンクグループがNVIDIAへのArm売却を中止する至った背景を解説してもらった。 - ソフトバンクG、ArmのNVIDIAへの約4兆円売却を断念 再上場へ
ソフトバンクGはArmのNVIDIAへの売却断念を正式に発表した。この取引には英、米、EUが懸念を表明していた。ソフトバンクGはArmの再上場の計画も発表した。 - Arm売却中止、「なぜそこまでして止めるのか」 孫会長の思惑と恨み節
孫正義会長は、英Armの売却が、IT業界や欧米政府らからの反発を受け中止になった件について「なぜそれほどまでに止められなければならなかったのか」と心中を語った。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.