注目集める「AIコスプレイヤー」の作り方を調べてみたら、“無規制地帯”が見つかった イラスト生成のダークサイド(2/3 ページ)
注目集める「AIコスプレイヤー」。その作り方を調べてみたら、インターネットの“無規制地帯”が見つかった。
見つけた無規制地帯 イラストも実写も
つまり話題のAIコスプレイヤーの画像は「アジア人っぽい実写風画像を作れる学習済みモデル」+「韓流モデルのような外見にするLoRA」+「コスプレさせたいキャラっぽくするLoRA」でできているわけだ。
すでに察しが付いていると思うが、ここまで登場した学習済みモデルもLoRAも、恐らくは多くが権利元の許可を取っていない。中には権利関係をクリアにしたものもあるかもしれないが、そうでないものも多いだろう。
実際、Civitaiには「生成結果を特定のキャラクターに近づけるためのLoRA」が大量にあった。特定のゲーム名、例えば「ブルーアーカイブ」などと調べるとこんな様子だ。
むろん、LoRAにも参考となる画像は必要なので、公式のイラストや二次創作、AIに生成させたイラストなどを持ってきて使っているのだろう。そしてkoreadolllikeのように、Civitaiでは写真を基にしていると思しきLoRAも存在する。イラストだけではなく、写真でも同様の事態が起こっていると考えられる。
無規制地帯はつきものだが…… 議論の前に考えたいこと
AIコスプレイヤーを巡っては「人間いらなくねって言ってる層、完全にコスプレイヤーを消費物として見てる」「AIの写真加工と何が違うの」などと議論が紛糾している。ただ、恐らく問題はそれ以前のところにもあるはずだ。
現行法では、画像をAIの学習データに用いるとき、著作権者の許諾を得る必要はない。ただし特定のキャラクターなどをまねた画像を出力しようとするのは、違反になる可能性がある。大前提として、自分の写真や制作物を使ったデータが、第三者に許可なく配布されていることが、気持ちのいい話ではないと感じる人も多いだろう。
無規制地帯は技術の黎明期にはつきもの。とはいえ、間違いなくそれを不快に感じる人も出るだろう。言い尽くされた事実ではあるが、AIイラスト生成については法律が追い付いていない状況だ。AIコスプレイヤーを巡る議論においては、その生成背景についても考慮に入れるべきだろう。
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