週末は気球で“宇宙”へ 国内ベンチャーが挑む「100万円台成層圏への旅」 気になる安全面は?(2/2 ページ)
国産宇宙ベンチャー企業の岩谷技研は2月21日、気球を使った宇宙遊覧を実現する「OPEN UNIVERSE PROJECT」を開始し、2023年度中にサービスを提供することを発表した。なぜ気球を使うのか、そして気になる安全性はどうなっているのだろうか。
気になる安全面は?
気球での宇宙遊覧と聞くと気になるのは安全性。岩谷技研によると、気球を100回利用した際の重篤事故率は0.008%となっており、自動車やバイクなど、普段使用している乗り物と同程度の安全性が確認されているという。
気球の素材はプラスチックで、下降時もガスの放出を抑える「ガス漏れが起こりにくい構造」となっているという。浮揚にはヘリウムガスを使用し、高度の調整はガスを抜く弁を電磁的に遠隔で操作する。なお、宇宙遊覧中に想定される最大のトラブルは「浮力の源であるガスを抜くことができず、帰還できなくなること」という。対策として遠隔操作以外に、マニュアル操作でガスを抜く機構も用意する。
これに加え、安全対策としてパラシュートを何重にも実装する。自社開発・自社製造の気球は、緊急時にパラシュートに変形(特許取得済み)する他、キャビン搭載の「キャビン用パラシュート」、緊急脱出用の「乗員用パラシュート」など複数の装置が実装されている。
キャビンでのトラブル対策も想定されている。クラックなど比較的小規模の損傷については、内圧で密着するパッチを使い、キャビン内で修復できる準備を進めているとのこと。大規模な損傷の場合は、気球をパラシュートに変形させて空気のある高度まで降下し、キャビン用、乗員用それぞれのパラシュートなどの安全システムを使って帰還するという。
その他、気球飛行で気になるといえば風で流されたときのケース。気球が国外に飛ばされてしまう可能性はないのだろうか。
同社によると、適切なタイミングで気球のガスを抜くことができず、浮揚したままの状態に陥った場合、風向きによっては国外まで飛ばされることも物理的には起こり得るという。それを回避するため、下降に関する安全システム(先述の弁のマニュアル操作機構など)を二重三重に用意。万全な気象予測のもと、風速や風力が最適ではない状況下では基本的に打ち上げは実施しないという。同社が過去行った300回以上の打ち上げで、気球が日本の領域を出たことは一度もないとしている。
同社は無人のものを含めて年間60以上の実験を実施し、宇宙遊覧の安全性向上に向けて実証実験を進めている。
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