“AR定規”は引っ越しで活躍する? 試して分かった魅力と課題:遊んで学べる「Experiments with Google」(第32回)(1/2 ページ)
AR定規の精度はどのくらい? スマホ1つで物のサイズを測れるWebアプリ「Measure Up」を実際に使って誤差を調べてみた。実用的なのか?
「Experiments with Google」は、Googleが人工知能(AI)や拡張現実(AR)といった最新技術の可能性を示すために、実験的な応用例を紹介するショーケースだ。膨大なコンテンツを公開しており、その多くはスマートフォンやPCで試せる。
この連載では、多種多様な応用例の中から興味深いものをピックアップ。実際に遊んだ体験レポートを通して、裏側にあるテクノロジーや、技術の活用方法とその目的を解説する。
読者の皆さんも、ぜひ自分の手で試しながらその仕組みを学んでもらえたらうれしい。きっと、最新技術の魅力に気付くはずだ。
引っ越しで重宝する? AR定規「Measure Up」の精度はいかに
春は進学や卒業、就職、転勤など生活が大きく変わる人が多いシーズンだ。それに伴って引っ越しや模様替えに追われ慌ただしくなることも少なくないだろう。そこで連載32回目の今回は、引っ越しに役立ちそうなGoogleのAR定規「Measure Up」を取り上げる。
Measure Upは、Google Creative Labが開発したWebアプリだ。ただし一般的なWebアプリと違って、Android版のChromeブラウザでしか動かせない。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
Measure UpのWebアプリにアクセスすると、スマホのアウトカメラで捉えた周囲の様子が画面に表示される。その状態で長さを計測したい対象物にカメラを向け、測る部分の始点と終点を指定すれば2点間の距離を計算してくれる。始点〜終点の指示を連続で行えば、2点間の直線距離だけでなく、平面の縦横や直方体の縦横高さを一気に測れる。
もちろん、ちょっとした物の大きさを測るのなら普段使っている巻き尺で十分だ。ただし、巻き尺は測るたびに数字をメモする手間がかかってしまう。Measure Upなら画面に表示された計測結果をスクリーンショットで保存すれば済む。
もしかしたら、これはとても便利なのではないか。引っ越しシーンを想定しながら、実際にいろいろ測って使い勝手を確認しよう。
段ボール箱やギターアンプを測る 巻き尺の計測結果と比べてみた
最初に測ったのはギターアンプ。置き場を考えるときにサイズを測るし、隅が丸くなっているものの単純な形なので測りやすいだろう。
巻き尺で測った大体のサイズは41.7(幅)×22.5(奥行)×35.5(高さ)cmだった。これをMeasure Upで測ると37.3(幅)×22.5(奥行)×33.6(高さ)cmになった。奥行きは見事にピッタリだったが、横の値は大きくずれている。
画面上でも、AR表示された直方体の奥行きはうまく合っているのに対し、横はかなり短くなってしまった。高さについても、測定時の動画(以下)を見るとよく分かるが、位置を合わせるのに失敗していた。誤差なく位置合わせすることが意外と難しい。
隅が丸くない方が位置合わせしやすいと考え、今度は段ボール箱を測った。結果は、巻き尺だと45.0(幅)×26.0(奥行)×21.4(高さ)cmだったのに対して、Measure Upの測定値は42.4(幅)×24.5(奥行)×19.7(高さ)cm。全体的な誤差はギターアンプのときより小さくなったものの、2cm前後の違いが生じてしまった。
最後に測った石油ファンヒーターも、巻き尺は32.0(幅)×23.5(奥行)×42.5(高さ)cm、Measure Upは33.4(幅)×26.4(奥行)×41.3(高さ)cmで、やはり差がある。試しにMeasure Upの画面を表示しながら石油ファンヒーターの周囲を動いてみたところ、ARの直方体がずれて表示されてしまう。このずれが誤差を生み出しているのかもしれない。
誤差はあるけど、便利に使おう
このように大体の大きさを把握する程度の使い方なら、Measure Upも十分に使える。しかし限られたスペースに家具をピッタリ配置するといった高い精度が求められる場面では、Measure Upに頼ると危険だ。その点を理解したうえで上手に活用するのと良い。
実のところ、Measure UpのようなAR定規ツールは珍しくない。Googleは過去に「Measure」という物差しアプリを配信していたし(現在は非公開)、Android/iOSどちらのOSでも同様のアプリはたくさんある。
それらと比べてMeasure Upが便利なのはWebアプリという点だろう。ARコンテンツをWebブラウザ上で操作できる「WebXR」を活用することで、面倒なインストール操作をせずにすぐに使える。
Android版のChromeブラウザでしか使えないという制約はあるが、ブックマークに登録しておくと役立ちそうだ。
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