法人もキャッシュレス なぜ銀行振込からカード決済に? UPSIDER vs バクラクビジネスカード(前編):SaaS対決(2/3 ページ)
今回のSaaS対決では、UPSIDERとバクラクビジネスカードが提供する、決済と管理を円滑にするためのSaaS的な機能を掘り下げていく。単なる支払手段としてのビジネスカードではなく、企業における決済領域全ての業務プロセスをいかに円滑にしていくかという話だ。
クレジットカードの歴史と機能
クレジットカードは、1958年米国のカリフォルニア州フレノズという小さな町で産声を上げた。当時、ダイナースクラブのような事前にチャージして利用するカードはあったが、後払いできるクレジットカードはまだ存在しなかった。
クレジットカードの利用には、金融機関(カード会社)、加盟店、カード利用者という三者が参加するネットワークが必要だが、まだクレジットカードというものを誰も見たことがない状態で加盟店の開拓は難しい。そこで、バンク・オブ・アメリカという銀行は、住民6万人にクレジットカードを郵送し、この小さな町でクレジットカードのテストを開始したのである。
すでに6万人のカード会員がいるため、商店街の店舗との交渉は順調に進み、あっという間に3000店以上が加盟店になった。バンク・オブ・アメリカはこのやり方で地域を拡大し、1年後にはサンフランシスコ、サクラメント、ロサンゼルスにも進出する。フレノズでクレジットカードを配ってから13カ月後には、200万枚のクレジットカード、2万の加盟店を有する巨大なネットワークを築いた。
カード利用者はカード会社と契約することで、加盟店でのカード決済が可能になる。加盟店は、カードの利用代金を後日カード会社から所定の手数料を差し引かれた状態で受け取る。カード会社はカード利用者と加盟店をつなぐ役割を果たし、利用者にはカード利用額を請求し、加盟店には手数料を引いた金額を支払う。この三者の関係が成立することでクレジットカードは利用できる。
クレジットカードの券面にあるVISAやMasterCard、JCBなどのロゴは、国際ブランドと呼ばれ、世界中に構築された決済ネットワークが利用できることを示している。最大規模であるVISA/MasterCardは世界200カ国以上、3850万店の加盟店を持ち、日本だけでなく世界中でクレジットカードを利用できるネットワークを提供している。フレノズの実験からわずか65年で、クレジットカードは世界的な巨大ネットワークとなったのである。
日本でも近年はQRコード決済が一気に普及したことで、少しクレジットカードの影が薄くなったように感じるかもしれないが、2021年のキャッシュレス決済比率32.5%のうちクレジットカードが27.7%、電子マネーが2.0%、コード決済が1.8%と、キャッシュレス決済の主役は今でもクレジットカードである。
日本にはアメリカン・エキスプレスやダイナースの海外系、オリコやニコスなどの信販系、セゾンカードやイオンカードなど流通系、三井住友カードや三菱UFJカード、UCカードなどの銀行系など、母体によって企業カラーから戦略まで全く異なるさまざまなカード会社が存在する。その中でもビジネスカードを手がけるのは、主に海外系と銀行系のカード会社である。
会社の経費支払いのために発行されるクレジットカードであるため、誰に持たせるか、何にいくら使ったのかなどを厳格に管理する必要がある。日本では法人間の決済をクレジットカードで行うことは少なく、ビジネスカードも接待や出張が多い役員や営業社員のために発行されるものという側面が強かった。
パソコンやスマホの貸与と同様に、異動や退職に伴って回収が必要になることもあり、社内で必要最小限の枚数を発行して管理することが当たり前であり、全社員にビジネスカードを持たせたり、用途に応じて自由にクレジットカードを発行することはこれまでは不可能というのがこれまでの状況だ。
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