トンボ鉛筆のデザインペン「ZOOM」が復活 迷走の末に辿り着いた“1本の美学”とは?:分かりにくいけれど面白いモノたち(8/8 ページ)
「空白を、ノックする」「いくつもの深さを持つ、透明」「書かなくても触れたくなる」──これらは2月にリブランディングしたトンボ鉛筆「ZOOM」のキャッチコピー。一時は迷走したという人気シリーズは、いかに再生したのか。開発陣に話を聞いた。
実際、エレガントといってもいいくらいのまとまりがある。クリップが末広がりになっているというのは、相当変なのだけど、上に逆円すい状のボタンがあって、その2つの三角形が並ぶことで、良い感じにバランスがとれている。そういう反復も随所にあって、造形的にとても面白い。
上がボールペン、下がシャープペンシル。ノックボタンとのデザイン上のリンクはボールペンの方が分かりやすいが、先端に向かって真っ直ぐに尖っていくシャープペンシルの方が、筆記具として美しい。微細な違いで見え方が変わるのがデザインの面白さであり難しさだろう。
「L2」にはシャープペンシルもあって、これがまた使いやすい。どういう持ち方をしても、良い感じにバランスが取れるので、デッサンなどの絵を描くのにも使えるし、三角形のグリップは持ちやすく、ホールディングも良いので、しっかりと長文を書くのにも向いている。国府田氏は、見た目からデザインしたと仰っていたけれど、それが、きちんと使いやすさにつながるのだから、デザインが間違っていなかったということではないか。
「筆記具のデザインの基本に、3の倍数で考えるというのがあるんです。それは絶対的な考え方で、だから三面体で作った時に、それが持ちやすくなるだろうということは分かっていました。とはいえ、完全に造形先行で、ソフトフィール塗装も、マットな塗装にしたいなと思っていたところに、ちょうどうちのデザイングループの取り組みの一つである『新しい素材や製法、表現の探索、活用』を行なっている中で見つけて、採用した感じです」(国府田氏)
今回のZOOMシリーズでは、新しい素材を使うというのもテーマの一つで、それもあって、ジュラルミンやDURABIO、ネオラバサンなど、聞きなれない素材が使われている。しかし、それらが、デザインの中に綺麗に生かされているのが美しい。
まだ、新しいZOOMは始まったばかりで、しかもトンボ鉛筆では、かなり長期的な計画を立てているという。まだ、Cシリーズの更に上位に当たるシリーズも登場する予定だ。デザインをメインにしつつ、使える筆記具をというシリーズは、世界中探しても、ほとんど無いわけで、しかも、話を聞いてみると、遊び心やユーモアも忘れていないことが分かった。筆記具好きとしては、今後のシリーズ展開にも期待したい。
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