龍谷大学、農学部でデータ分析基盤整備 農場から環境データを自動収集 「データ思考を学んでほしい」
SIerのSBテクノロジーは、龍谷大学の農業データ分析基盤を開発したと発表した。農場に設置したセンサーから得られる環境のデータをMicrosoft Azureに自動集約し、分析するためのデータ基盤を整備した。
SIerのSBテクノロジー(東京都新宿区、以下SBT)は4月4日、龍谷大学向けに農業データ分析基盤を開発したと発表した。農場に設置したセンサーから得られる環境のデータをMicrosoft Azureに自動集約し、データ基盤上で分析できる。SBTと龍谷大学はこの取り組みを通して、農業分野でDXを先導する人材の育成を目指すとしている。
農業従事者の高齢化や担い手不足への対策として龍谷大学では、農学部と先端理工学部が連携。デジタル技術を使った生産性向上に取り組んでいる。同大ではこれまで、農場の環境データを収集・管理し日々の実習を行っていたが、データの一元化ができておらず、管理や共有に課題があった。ここにSBTが加わり、農業データ分析基盤を開発した。
今回開発したデータ基盤では、農場に設置したセンサーから気象や水質、土壌などを取得し、Microsoft Azureに自動集約できる。データ収集基盤とデータ蓄積基盤、データ加工基盤の3構造に分け、アクセシビリティーを向上。学生が誤操作でデータを削除してしまってもすぐに復元可能な構成になっているという。
また、SBTのデータサイエンティストによる学生向け講義も実施。実際に収集した農業データをBIツール「Microsoft Power BI」で可視化し、レポート作成演習を行った。講義に参加した学生からは「分析効率の向上や共有のしやすさに生かせると思った」「データ活用はアルバイト先の飲食店の売上表にも生かせそう」などの声が上がった。
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「学生にはデータ思考を学んでほしい」
龍谷大学によると、農学部では約2.7haの実習用農場と研究用水田を所有しており、研究教育を行っている。この農場まではキャンパスから車で10分程度かかるため、各センサーで収集したデータは、USBメモリやUSBケーブルでPCへ取り込み、整理・分析を行っていた。今回整備したデータ基盤によって、これらの労力を大きく削減できると説明する。
今回の取り組みを通して農学部の大門弘幸学部長は「サイエンスとして農業を学んでほしいと思う。エビデンスをもってデータを語れる農業従事者の必要性が増す中、データ思考のマインドを持つことは大切。いずれは今回のデータ基盤を通じて世の中に新しい体験価値を生み出してほしい」と学生たちにエールを送った。
また、Azureデータ基盤との各デバイスを連携する過程には先端理工学部の学生も関わったという。龍谷大学は「クラウドコンピューティング分野の最先端で実務に携わっているスタッフの方々から実践的な知識・経験を教示してもらう機会があったことは学生の成長に大きくつながった」と話す。
先端理工学部の外村佳伸学部長は「よくある統計データだけではなく、実データを取り扱うことの意義を感じてほしい。すでにあるデータだけでは、データに閉じこもってしまいがち。今回の農学部との取り組みによって、現場とのコネクションをもつこと、相互にフィードバックすることの重要性を深く学んでほしい」と述べた。
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