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コラム

なぜ? 「Suica」がサーバ型に移行する理由 25年近く稼働する“安全神話”の象徴に何が(1/3 ページ)

JR東日本はSuicaで新改札システムを導入し、これまで駅改札でローカル処理を行っていた運賃計算をサーバ処理に移管していく。改札機で計算することで高速処理と耐障害性を実現していたSuicaだが、なぜサーバ型に舵を切るのか。

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 4月4日昼頃、一部店舗でSuicaを含む交通系ICカードなどFeliCa系電子マネーが利用できなくなる障害が報告された。筆者はちょうどその時間帯にイオン系の「まいばすけっと」で買い物をしていたが、「この時間、交通系ICカードが利用できません」との告知でレジ待ち行列が混乱している様子が見受けられた。このほか、自販機での電子マネー決済ができないという報告も多数散見され、それなりの影響が出ていた印象だ。

 同日中にJR東日本メカトロニクスから「クラウド型マルチ電子マネー決済システムにおける不具合発生につきまして」というプレスリリースが出されており、処理センターのハードウェア障害であることが報告された。確認した範囲で、同社が日本カードネットワークと共同運営している「J-Mups」における障害とみられ、このうち電子マネーの処理をローカル(リッチクライアント)で行っていない“クラウド利用型”の加盟店で障害が発生していたようだ(細かくいうと、リッチクライアントでも処理形態によっては正常動作しない)。

 折しも同日、JR東日本はSuicaで新改札システムを導入し、これまで駅改札でローカル処理を行っていた運賃計算をクラウド型のサーバ処理へと移管していくことを発表している。北東北の3エリアで2023年5月27日から運用が開始され、首都圏を含む残りのJR東日本営業エリアでは夏以降の順次展開となる。メリットとしては改札機の導入・メインテナンスコストが削減できるほか、同社が現在準備している「QRコード乗車券」や「Suicaを使った新しいチケット」など、利用者側が新しい企画券を利用しやすい環境ができる。


ローカルだった運賃計算をサーバ側に移管

 また運賃計算がサーバでの集中方式へと移行することで、これまでJR東日本管内でも存在していた「異なるエリアをまたいでのSuica利用」が可能になる。つまり東京都内のJR駅にSuicaで入場して、そのまま新潟や東北のSuica対応駅の改札で“タッチ”で出られるというわけだ。


QRコード対応の新型改札機

 クラウド化はメリットも多いが、「ネットワーク障害が起きて一気に全てのシステムがダウンしたらどうするのか」「いままではローカルで分散処理していたのに、機能的に退化していないか」「センターサーバに問い合わせが発生することで処理遅延が発生してラッシュ時の乗客をちゃんとさばけるのか」といった疑問の声が一部で上がっている。冒頭の「“クラウド”型マルチ電子マネー決済システム」での障害もあり、クラウドとSuicaの組み合わせに対して反発する層もいるのだろう。だが、実際どうなのか。

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