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コラム

なぜ? 「Suica」がサーバ型に移行する理由 25年近く稼働する“安全神話”の象徴に何が(2/3 ページ)

JR東日本はSuicaで新改札システムを導入し、これまで駅改札でローカル処理を行っていた運賃計算をサーバ処理に移管していく。改札機で計算することで高速処理と耐障害性を実現していたSuicaだが、なぜサーバ型に舵を切るのか。

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Suicaは刷新の時期が近づいている

 筆者自身も含め、Suicaの信頼性の高さや性能について紹介する記事がたくさん出回ったため、日本国内には一種の「Suica神話」のようなものが存在している。実際、1990年代後半に登場したシステムとしては非常に画期的ではあったが、現在では市場のトレンドに合っていない部分があったり、機能拡張による建て増しやルール変更が行われた結果、どんどん扱いづらいものになってきているのが現状だ。

 例えば、利用にあたっては必ず事前チャージが必要で、オートチャージを利用するためには指定管内の改札をいちど通過する必要があったり、しかも限度額は2万円でとどまっている。ローカル処理での限界から同じJR東日本管内であっても「エリアまたぎ」という現象が存在し、関東や東海、関西といった大きな枠での営業区域を越えてのSuica利用はいまだできない。

 改札機の導入や更新にも膨大なコストがかかり、後に無人駅や利用の少ない駅への対応のために計算処理をエリア同士でまとめた簡易改札が導入されたものの、コスト高であることには変わりない。近年では物販でのSuica利用拡大のために、レスポンスタイムの許容時間やネガデータ反映周期の緩和を打ち出したりと、改札処理とそれ以外でSuicaの運用ルールが別枠で設定されるようになった。「Suicaをクラウド処理で決済利用する」という仕組みは、このルール緩和によって実現し、コスト削減効果で加盟店の積極導入を促したものだ。

 実際のところ、これらの課題はほぼ「Suicaのクラウド化」で解決できる。Suicaはもともとローカル処理を前提としていたため、安全性を高めるためのルールが厳しく決められていた。これをクラウド化することで「クレジットカードのようなポストペイ導入」や「限度額の引き上げ」が容易になり、ローカル処理のために高価な改札機やサーバを駅に設置する必要がなくなって導入コストは大幅に引き下げられる。

 運賃計算もサーバ側に処理がまわることで「管内でのエリアまたぎ」の計算が容易となり、利用者側の不便も解消されるようになる。なぜ、いまクラウド化なのかといえば、それを実現できるだけの「高速なネットワークと大規模処理が可能なサーバ環境」が整ったからだ。技術の大幅な進化が、Suicaが登場した約25年前時点では不可能だったことを可能にした。


新しいSuica改札システムで実現する「新Suicaサービス」

 クラウド化による利用者にとっての大きなメリットは「SuicaのID化」にある。Suicaを一種の通行手形のように扱い、事前に購入しておいた乗車券や周遊券など企画券と組み合わせて改札通過が可能になる。チケットの事前購入はWebサイトやMaaSアプリなどから可能で、これにSuicaの情報を紐付けておくことで、改札通過時にSuicaのID情報を基にサーバ上のチケット情報を参照し、場合によっては企画券の利用を優先する。同様の仕組みはJR東海が東海道新幹線でスマートEXのようなサービスで実装しており、SuicaのID化とクラウド対応の典型例となっている。


クラウド化によりスマートフォンやWebとの親和性が高まる

 このあたりの詳細は別記事を参照してほしい。

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