教頭先生、GoPro装着! まる1日“学校DX”の課題探し 実際にやった教育委員会に話を聞いた(2/2 ページ)
「教頭先生の頭に『GoPro』を装着して現場を観察するなど、結構斬新なことをやった」──静岡県三島市教育委員会による業務改善の裏側。キーパーソンに詳細を聞いた。
改善点には他にも続々 保護者からの情報収集など
最初の取り組みが成功したことを受け、三島市はkintoneによる別業務の効率化にも着手。22年2月ごろに改めてサイボウズとディスカッションし、改善できそうな課題を再度洗い出した。
その一つが、問題行動を起こした児童・生徒の情報の集約だ。これまでは設備の修繕依頼と同様、Excelシートに資料をまとめ、月に1回提出してもらう仕組みだった。ただ、毎月決まった時期に多くの報告が集まることから、教育委員会側からの指導指示が出しにくかったという。
そこで、kintoneを使い、リアルタイムに近い形で情報を共有できるアプリを開発。報告の形式も改め、月に1回ではなく都度アプリに入力してもらう形にした。これにより、教育委員会が指導指示の方針を立てやすくなったという。
これまで紙で集めていた、新1年生の問診票や既往歴、保護者の緊急連絡先といった情報をオンラインで集められる仕組みも、1年かけて整備。2023年4月に入学する子供達の情報を集約する用途で実際に使ったという。
オンラインでの情報集約については、保護者からの反対も少なかったと杉山さん。当初は「紙で提出したい」と考える保護者が出ることも想定し、入学式で「紙で提出したい人は学校に紙を取りに来てください」と案内していたが、実際はほとんどがオンラインでの提出だったという。
「恐らく、公教育の中でオンラインでの情報収集をやっている例はなかなかないと思う。担任の先生や養護教諭の業務が改善できると思っている。保護者も含め、これまで何枚もの書類に同じ住所や名前を書いていたが、それをしなくて済む」(杉山さん)
一方現場とのすれ違いも ただ仕事が減ればOK、ではない?
ただし実際に業務削減をするに当たっては、学校現場と意見がすれ違うこともあったという。例えば先生の中には業務を削減して、早く帰るように伝えても「自分はしたくてしているから放っておいてくれ」などと返す人もいると杉山さん。長時間労働の是正という観点だけだと、施策の意義が伝わらないことがあった。
杉山さんは「教師は児童生徒と向き合う仕事であれば『やってよかった』と思えるが、それ以外の事務的業務に関しては相当な負担感があるのではないか」と状況を分析している。実際、年次で行っている教職員のストレスチェックでも「働きがいに関する結果は非常にいい一方、仕事の負担感に関する結果が悪い」という。
そこで、今後は施策の考え方や、先生との対話の方法を変えたいと杉山さん。「長時間労働の是正というだけではなく、事務的作業を極限まで減らすことで、やりがいの向上やより良い働き方につなげたい」という。実現に向け、現場の課題を1校単位でヒアリングし、各校の事情に合わせた対応も模索するとしている。
ヒアリングはITの活用拡大にも反映する方針だ。実は三島市教育委員会が現在使っているオンプレミス基盤は、ライセンス更新が2年後に迫っている。すでにクラウド前提でのシステム刷新を検討しているが、選定に当たっては教職員の声も取り入れる方針だ。
「何を使いたいか、ではなくどう働きたいかという視点で意見を聞きながら、それに合ったシステム更新をしていきたい」(杉山さん)
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