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インタビュー

高校生が学園祭の配信システムをAWSで自作 奈良・西大和学園「技術統括局」の活躍、本人たちに聞いた(1/4 ページ)

学園祭の映像配信システムや、チケット管理システムをAWSで自作した高校生たち。取り組みの一部始終と、学校がGOサインを出した理由を、本人たちに聞いた。

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 今やさまざまな企業・自治体で活用されるクラウド技術。もちろん、学校が使う事例もある。奈良県北葛城郡にある西大和学園も、クラウドを活用する学校の一つだ。同学は2022年5月、学園祭の開催に当たり、AWSを活用した映像配信システムや、チケット管理システムを開発・活用した。

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西大和学園の校舎

 ただ、このシステムはいわゆる「システム開発事業者」や、学内のIT部門が作ったのではない。なんと生徒自らがクラウドで開発・提供した。手掛けたのは同学の「西大和学園技術統括局」(旧・生徒会電算部)という、生徒たちの集まりだ。

 生徒自作のシステムが誕生し、実運用に至った背景を、同学の光永文彦教諭(情報科)、そして西大和学園技術統括局の栗栖(くりす)幸久さん、吉田伊織さん、渡部総一郎さん(いずれも高校2年生)に聞いた。

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映像配信など複数システムを生徒が自作 西大和学園の学園祭

 西大和学園は共学制の私立中高一貫校だ。生徒数は中高合わせて約1800人。寮もあり、関西を中心に日本全国や海外からも生徒が集まっている点が特徴という。

 もちろん、体育祭や学園祭なども毎年開催している。中でも毎年9月に開催する学園祭「清榮祭」(せいえいさい)は“目玉イベント”の一つだ。高校2年生たちが、自らイベントの内容などを企画。夏休みなどに下準備を進め、準備期間+本番2日のまる1週間取り組む生徒主導の催しという。

photophoto 2022年の清榮祭の様子

 ただ、2020年以降はコロナ禍の影響を受けた。規模を縮小し、在学生限定で開催していたという。22年も入場制限ありでの開催だった。

 技術統括局がシステムの開発を手掛けたのは、そんな22年の清榮祭だ。同局は大きく分けて(1)公式サイト、(2)入退場管理システム、(3)チケット管理システム、(4)3DCGバーチャル校舎、(5)映像配信プラットフォーム「NYGstreaming」──などの運用・開発に携わった。

 例えば(1)公式サイトの運用に当たっては、提供基盤としてAWSの仮想プライベートサーバ「LightSail」を導入。(2)については感染拡大の防止に向け、仮想サーバ「Amazon EC2」を使った入退場管理システムを開発した。事前にメールで配布したQRコードをChromebookなどで読み取り、個人を認証。入退場を管理することで、入場制限を適切に機能させたという。

 (3)チケット管理システムも同様に、入場制限を適切に機能させるものだ。Webフォームで希望する公演のチケットを注文してもらう仕組みで、定員を超えた場合に抽選を実施する機能もあった。こちらもEC2を活用して開発・提供した。

photophoto 栗栖さんがQiitaに投稿した入退場管理システム(左)とチケット管理システムのシステム設計図

 (4)3DCGバーチャル校舎では、学園祭に行けない人でも学校の雰囲気を感じられるよう、校舎を3Dモデルで再現。米MozillaのオープンソースVRアプリ「Mozilla Hubs」で入場できるようにした。当初はゲームサーバを提供するAWSのサービス「Amazon GameLift」を活用する予定だったが、満足な性能に達しなかったという。

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栗栖さんがQiitaに投稿した映像配信プラットフォーム「NYGstreaming」のシステム設計図

 (5)映像配信プラットフォームは、AWSのライブ配信サービス「Amazon Interactive Video Service」(IVS)を活用して開発。有志団体のパフォーマンスなどをライブ配信できるようにした他、オブジェクトストレージ「Amazon S3」を活用し、映像をアーカイブ配信できる仕組みも作った。

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栗栖幸久さん

 開発に当たっては、各メンバーで作業を分担。例えば栗栖さんは技術統括局の局長として工数管理を担当した他、クラウドの運用管理も行った。吉田さんは3Dモデリング、渡部さんはコーディングをそれぞれ担当した。公式サイトではアクセス過多によるトラブルなどがあったものの、他のシステムをおおむね問題なく提供できたという。

技術統括局はなぜ誕生? 前身「生徒会電算部」の軌跡

 生徒たちの活躍により、無事に開催できたという清榮祭。しかし、高校生が自らイベントのシステムを開発し、実際に提供するのは、予算・人員などの問題もあって簡単な話ではない。技術統括局の取り組みは、なぜ実現したのか。

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