あの「パロアルト研究所」がXeroxのもとを離れる MacやPCなど現代コンピュータの“聖地”
米Xeroxが、同社傘下の研究組織「Palo Alto Research Center」(PARC)を、非営利研究機関の米SRIインターナショナルに寄付すると発表した。現代コンピュータに欠かせないGUIであったり、イーサネットが開発された場所として知られる。
米Xerox Holdingsは4月24日(現地時間)、同社傘下の研究組織「Palo Alto Research Center」(PARC)を、非営利研究機関の米SRIインターナショナルに寄付すると発表した。PARCはXeroxを代表する研究機関で、現代コンピュータに欠かせないGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)であったり、イーサネットが開発された場所として知られる。
これにより、Xeroxは独自の印刷、デジタル、ITサービスに関する新しいイノベーションの提供に集中し、PARCチームは主要な研究機関に加わり、次の成長の進化を先導できるという。XeroxのSteve Bandrowczak CEOは「PARCの高度な技術革新はSRIによって維持される一方で、Xeroxはその運用を簡素化および最適化し、ハイブリッド ワークの継続的な進化にソリューションを集中できる」としている。
寄付の一環として、Xeroxは「Technology Exploration and Innovation Program」という優先研究契約を締結し、SRIはXeroxとその顧客に委託研究開発サービスを提供するという。両社は、このプログラムを通じてXeroxのサービス領域(印刷、デジタル、ITサービス)に関連した概念実証と実装へのロードマップを作成。Xeroxは引き続きPARC内にブランドのイノベーションハブを保持。顧客向け会議、デモンストレーション、年次会議を行う場として活用する。
PARCは1970年に設立されたXeroxの研究施設(2002年からはXeroxの完全子会社)。イーサネット、GUI、レーザー印刷、ユビキタスコンピューティングなどの研究の他、コンピュータ研究者のアラン・ケイが設立に参加したことで知られる。1973年には、アラン・ケイが描いた理想のパーソナルコンピュータ「Dynabook」を暫定的に実現するものとして、ワークステーション「Alto」を生み出している。
AltoはOS的な役割も兼ねたオブジェクト指向言語「Smalltalk」を採用し、マウスを使ってのGUI操作やWYSIWYG(ディスプレイの表示内容と処理・印刷の同一化)を実現。コンピュータ業界に大きな影響を与えた。スティーブ・ジョブスもPARCを見学した際にAltoのデモンストレーションを見て衝撃を受け、Macintoshの先祖にあたる「Apple Lisa」(1983年発売)の開発を後押ししたとされている。
なお、SRIも当時からコンピューティング分野で先端を走っており、マウスやAlto誕生のきっかけの一つである「NLS」を開発したダグラス・エンゲルバートが在籍していた研究機関でもある(ともにSRI内に設置されたARCで開発)。
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