ディープラーニングが激速に NVIDIAの牙城を崩せるか? SambaNovaに聞く:清水亮の「世界を変えるAI」(4/4 ページ)
ディープラーニングにおいて、NVIDIAのGPUは欠かせない。ディープラーニングにおいてはNVIDIAのGPUに勝るソリューションは存在しないというのが常識だった。しかし今、この常識に風穴を開けようとするシリコンバレーのスタートアップがある。SambaNova Systems社だ。
オンプレミスのディープラーニング環境
――応用範囲は大規模言語モデルや深層学習に限らずたくさんありそうですね。
鯨岡氏 もちろんさまざまなタスクにも対応していますが、まずは大規模言語モデルをGUIから簡単に使える、「SambaStudio」というものを提供しています。
――これはどういったものですか?
鯨岡氏 SambaStudioは、GUIでお客さま固有のデータを用いてGPTなど大規模言語モデルのファインチューニングを行える開発環境です。学習したモデルは、プレイグラウンド機能を使ってWeb経由で試したり、API経由でアプリケーションから使えるようデプロイすることができます。すでに欧米の大手企業では社内文書のファインチューニングや社内で蓄積されたノウハウをもとに社内専用のチャットを開発するために使われています。どうしても、センシティブな情報をクラウドに送ることに抵抗のある業界というのは根強くありますので
――確かに。それは欧米企業だけでなく日本国内の大企業も例外ではないでしょうね。今のところは、OpenAIのAPIを使うか、AzureのAPIを使うしかないと思われがちですが、こうしたオンプレミス(会社内に置いて使う利用形態)型のサービスの需要はどんどん上がっていくでしょうね。
鯨岡氏 まさにそれが当社の狙いです。日本のお客様にもぜひ当社のシステムをご検討いただきたいと思っています。
――スタートアップ向けにはSambaNovaを体験できる支援プログラムが立ち上がっているそうですが、日本での展開はどうですか?
鯨岡氏 はい、日本のスタートアップからも問い合わせを受けており、現在支援を調整中です。
――本日は非常に刺激的なお話をありがとうございました。
鯨岡氏 こちらこそありがとうございました。
SambaNovaの挑戦は、果たしてNVIDIAの牙城を崩すことができるのか?
ビジネスモデルとしては、NVIDIAはGPUという「モノ」を売るのがメインのやり方であるのに対し、SambaNovaはあくまでも「ソリューション」を売るという違いがあるものの、その根底にあるのはどちらも独自の発想で設計されたアーキテクチャの勝負である。
こうした業界の競争が活発化することは、結果的に利便性や性能を高め、全体としてのコストダウンに貢献していくことが考えられる。我々ユーザーの側から見れば、健全な競争はどんどんやっていただきたいというのが本音だ。
ただ、SambaNovaのシステムはやや規模が大きすぎるかもしれない。日本の産業の大半は中小企業のため、日本展開を念頭に置くのであればぜひ中小企業でも手軽に導入できるようなソリューションの展開も期待したい。
筆者プロフィール:清水 亮
新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。2005年、IPA(情報処理推進機構)より「天才プログラマー/スーパークリエイタ」として認定。株式会社ゼルペム所属AIスペシャリスト。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。
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