ソニーやシャープも熱い視線 「電子黒板」が注目浴びる理由は?(2/2 ページ)
ソニーやシャープも熱い視線を向ける「電子黒板」。各社が営業活動・製品開発に力を入れる背景は。記者が教育系イベントで取材した。
「チョークで書ける」「UI見やすい」 特徴さまざま
各社が打ち出す商品の特徴もさまざまだ。例えばタッチパネル関連製品の製造販売を手掛けるナイスモバイル(長野県松本市)は、従来の黒板と一体化した形状の電子黒板「MAXHUB―CHALK―」を提供している。黒板の中央部にタッチディスプレイを埋め込み、両端だけ今まで通り──という見た目の製品だ。しかも、ディスプレイ部分はチョークでも文字などを書き込める。
先述した「PC・タブレットとの接続のしやすさ」を強みとする製品もある。例えば教育ICT機器ベンダーのテクノホライゾン(名古屋市)が手掛ける「xSync Board」(バイシンクボード)は、OSを問わず端末と無線接続し、画面を投影できるという。
もちろん、大手電気メーカーも参入している。例えばシャープ傘下のシャープマーケティングジャパンは、電子黒板「BIG PAD Campus」を提供。同製品は、NPO法人のカラーユニバーサルデザイン機構に認定を受けた、色覚に異常のある人でも伝わりやすいUIなどを特徴としている。
ちなみにシャープマーケティングジャパンやナイスモバイルなど、記者が取材したベンダー・代理店によれば、各社はすでに電子黒板を導入している私立校もターゲットにしているという。公立と差別化し、学生を集めたい学校にとっては「私立なのに公立校より電子黒板が古い」ことは弱みになり得る。よりハイエンドな機種に買い替え、公立校との差別化を図るところもあるとして、需要を見込んでいるという。
需要の背景はもう1つ
とはいえ、補助金の支給が終わったとなると、今後の需要が尻すぼみになる可能性も考えられる。しかし、実際はそうでもないようだ。というのも、電子黒板の需要にはもう1つ、リプレースの波という背景があるからだ。
そもそも、いま公立校にあるテレビなどは、文部科学省が2009年に示した「スクール・ニューディール構想」によって導入が進んだものだ。同構想では学校のICT環境整備などが掲げられており、アナログテレビからデジタルテレビへの置き換えが進んだ。
ただ、当時のテレビはメーカーにとっても古い品で、修理ができない商品も多い。これによりリプレース需要が生じており、よりPCと連携しやすい電子黒板を検討する学校が出ているという。
文科省の調査によれば、公立校(小学校、中学校、高等学校、特別支援学校など)の教室における大型提示装置の整備率は、2022年3月時点で83.6%。ただし、大型提示装置はプロジェクターや通常の大型ディスプレイを含むので、「タッチ操作ができるディスプレイ」に限ればもっと整備率が低い可能性もある。
当然、私立校は調査の対象になっていないので、販売の余地がある。2024年3月からは、小学5年生〜中学3年生の授業において、デジタル教科書の本格導入も始まる。今後、各社が残りのパイをどのように狙っていくのか、まだまだ見ものだ。
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