「この契約書、稟議に回しておいて」 法人カードのUPSIDER、対話形式で契約締結や稟議、支払いが可能な「AI Coworker」(2/2 ページ)
AI Coworkerは、会話形式で契約書の締結、稟議承認、支払いなどが行えるサービス。AIとはSlackを通じてやりとりし、AIが契約や稟議、支払いを取り扱うSaaSにアクセスして処理を行う。freee会計、クラウドサイン、DocuSign、Google Workspace、Salesforce、kintoneをはじめとする、成長企業での使用例が多い業務システムへの対応を予定している。
自然言語解析にGPTモデルを利用
最大の特徴は、支払い業務など決済までAIへの指示で完結することだ。
ChatGPTもプラグイン機能を使うことでSaaSなどにアクセスできるが、「お金の入出金まではプラグインではできないのでは。これは法人カードや銀行振込代行の事業を行ってきたUPSIDERだからこそ提供できるもの」(水野氏)だとしている。
AIが各SaaSのインタフェースとなることで、AI側に情報が集約される。この情報を活用し、管理部門向けには業務情報を一覧で管理できる機能も提供する。業務運用の漏れやミスを防ぐチェック機能も搭載し、「上場企業の監査基準に対応できるレベルのガバナンス体制を簡単に構築できる」(UPSIDER)。
開発に当たっては、AI開発企業のPKSHAグループにて「PKSHA AI SaaS」のプロダクト統括責任者を務めた森大祐氏が、VPoP(プロダクト最高責任者)として入社した。自然言語解析の部分にはAzure OpenAI ServiceのGPTモデルを利用、PDFを読み取るOCRや、SaaSとの連携部分には業務特化型のAIを組み合わせる。また内容によっては外部業者に作業を委託するBPOも利用する。
AI Coworkerに集約された情報から与信判断
ビジネスモデルとしては、法人カードUPSIDERを利用しているスタートアップ企業に無料で提供する計画だ。AI Coworkerを通じて集約された会社の重要な意思決定情報をもとに、リアルタイムの与信を実現するのが狙いだ。
このたびベンチャー企業への融資に向けた与信サービスを提供する「UPSIDER Capital」を設立しており、AI Coworkerが蓄積したデータをUPSIDER Capitalの与信に生かしていく。
「AI Coworkerでは、半年後にオフィスを移転するなど未来に向けた意思決定の情報が取得できる。それをもとに与信を作っていきたい。例えばユーザー企業が、広告でアクセルを踏むぞと意思決定したら、すぐに資金が着金するような未来を作っていきたい」(水野氏)
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