ITmedia NEWSは記事執筆フローにChatGPTなどAIを導入します
ITmedia NEWSが記事執筆・編集フローにAIを導入する。これにより、日々の編集・執筆効率を上げることで独自取材のリソースを強化する。この記事ではAIに担ってもらいたい部分と編集部として変わらず続けていく部分について整理する。
ITmedia NEWSでは、米OpenAIのチャットAI「ChatGPT」などの技術革新を受け、記事執筆・編集フローにAIを導入します。これにより、日々の編集・執筆効率を上げることで独自取材のリソースを強化していきます。
……と書くとちょっと仰々しいですが、そもそもすでにAI文字起こしなどで日常の編集業務にAIは入り込みつつあります。この記事は、AIにこれから担ってもらおうと考えている部分と、編集部として変わらず続けていく部分や責任について整理するものです。
分かりやすいように要約を先に示しておきます。
- 「取材・執筆・編集」のアシスト全般にAIを利用
- ChatGPT利用は「情報漏えいの懸念がないもの」に当面は限る
- 「AIを使ったから間違えた」は言い訳にならない
- 記事を作る主体はあくまで人
AIに担ってもらいたい部分
AIに担ってもらいたいのは、端的にいえば「取材・執筆・編集」のアシスト全般です。
取材の際にはその場のメモだけでなく、情報を後から確認・整理するために発言全てを文字に変換できると便利です。この「文字起こし」作業を従来は人間がやってきましたが、音声認識技術が進むにつれ、音声の文字への自動変換もかなり実用的になってきました。米GoogleのPixel 6/6 Proのボイスレコーダーアプリは英語だけでなく日本語の文字起こしでも優れていると話題になりました。こうした文字起こしアプリは、これまでも編集業務の一部で利用してきました。
ChatGPTは「情報の加工・抽出」での利用をメインに考えています。ChatGPTなど大規模言語モデルの利用に当たって気を付けるべきことの一つは「幻覚」(ハルシネーション)という、「もっともらしいウソを付く」現象です。ChatGPTにおすすめのレストランを聞いてみたら存在しない店名や住所が返ってきた、というのはChatGPTを使ったことがあれば少なくない人が経験していることでしょう。
GPTシリーズについては「知らない情報を教えて」より「渡したデータの範囲でいい感じにして」という命令の方が編集業務上はまともに使えそうです。その極端な例が「GPT-4は記者の仕事を奪うのか? ITmedia NEWSの記事を自動生成してみた」という記事で試行したやり方で、要は「原文はこれ、こういう風に出力して、あとはよろしく」と加工作業をさせています。「こういう風に」にはいまのところ結構工夫が必要で、一発で覚えさせるにはいわゆる「プロンプトエンジニアリング」が必要になりますが、特定用途に特化したアプリケーションの作成も将来的には検討していきます。
他にも、文字起こしした内容の要点を箇条書きで整理するなどもChatGPTは得意そうです。結果的にChatGPTが一部を執筆することにはなりそうですが、本質的には「情報の加工・抽出」が編集部として現状はメインの用途になります。
編集部が利用するのは基本的に有料の「ChatGPT Plus」(つまりGPT-4)となります。既報でもお伝えしている通り、GPT-4の方が各種ベンチマークのスコアが高く、実際に使っていても“頭の良さ”を感じます。無料のChatGPT(つまりGPT-3.5)は制約条件を受けるのが苦手で、言う通りに情報を加工させるのは難しいです。ただ、英語から日本語などの翻訳はGPT-3.5でも極めて流ちょうに可能なので、GPT-4に3時間当たり25メッセージ(7月5日時点)という制限もあることから、得意分野に応じた使い分けが重要と考えます。
もっとも、いずれの業務にせよ、利用に当たっては「ChatGPTに入力したものはOpenAIに学習に使われる可能性がある」という点は注意が必要です(オプトアウト可能にせよ)。したがって、編集業務におけるChatGPTの利用は「報道発表資料などですでに公開された情報など、情報漏えいの懸念がないもの」に当面は限るとします。
編集部がこれからも担う部分
AIを使うにせよ、記事としての最終出力は編集部が責任を持って行います。これはAIを使っていても使っていなくても当たり前のことですが、「AIを使ったから間違えた」は言い訳にならないということです。
「この記事は全てAIが書いたものでござい」というとテクノロジーを使いこなしている感じがしてかっこいいですが、そこに間違いや不適切な表現があったらやはりそれはそのまま公開した編集部に責任があります。他社事例でいえば、AIに書かせた結果として他媒体の文章をAIがほぼそのまま持ってきて問題になった例もありました。こうした盗用の懸念も、ChatGPTにさせることが「与えた情報の加工」であればクリアできると考えています(加工に与える情報自体が他媒体のものでないのは当然ですが念のため)。
「AIに担ってもらいたいのは、端的にいえば『取材・執筆・編集のアシスト』全般」と書いたように、記事を作る主体はあくまで人であり編集部でありライターです。その過程でかかる手間を短縮するのがAIというツールです。
しかし、情報の整理のみならず特に執筆部分にまで明らかにAIが関わったものについては、その明示の意味で記事末尾のコピーライトに生成AIを利用した旨の表示を入れるようにします。
ITmedia NEWSは、ChatGPTだけでなく、読者のみなさまへの発信に有用であればこれからもテクノロジーを取り入れていく所存です。
ちなみに、この記事はAIを使わず編集長が思いの丈をそのまま書きました。
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