非IT企業も「AIプログラミングのない時代には戻れない」 「GitHub Copilot」導入した東急の内製開発チーム、手応えは?(2/2 ページ)
AIプログラミング支援ツール「GitHub Copilot」を導入した東急の内製開発チーム。キーパーソンは「もう導入前には戻れない」と語る。手応えや効率化の効果を聞いた。
GitHub Copilotのない時代には戻れない
GitHub Copilotを実際に利用する野口さんによれば、集中力を切らさず、目の前のコードと向き合える点が便利という。「2時間半かかるタスクが1時間半で終わるような感覚。GitHub Copilotが人生の無駄な時間を確実に削ってくれた。GitHub Copilot for Businessは、現時点で1ユーザーあたり月19ドル(日本円で約2600円)。費用対効果も高いと思う」と実感を語る。
「今の知識と経験をもって3年前に戻り、上乗せで3年経験を積んだところで、GitHub CopilotなどのAIツールがある現代にはかなわないと思います。速くコードを書けることで、やるべきことにどんどん時間を使えるようになっています」(野口さん)
加藤さんは、GitHub Copilotにテストコードを書いてもらっているという。
「テスト用のコードを書く余裕がなく、いつも後回しにしていた。GitHub Copilotにリクエストすれば、早い段階でテストコードを書き、テスト用のデモデータも作ってくれる。“時短”できる上にバグも減り、ソフトウェア品質の向上につながっている」(加藤さん)
コミュニケーション円滑化など、さらなる期待も
現在はコーディングでの利用にとどまるが、今後は他の業務にもGitHub Copilot for Businessを活用していきたいという。
「一つは、ソースコードのレビュー。親しき仲でも間違いを指摘するのは気を遣う。淡泊な言葉だと傷つけてしまうかもしれないので、絵文字を使ったり、褒め言葉から入ったり、工夫している。ここにGitHub Copilotが入ることで、これは人じゃなくAIが言っているんだという意識になる。指摘される方の心理的負担も減り、コミュニケーションが円滑になって、さらなる高速化が期待できると思う」(野口さん)
加藤さんは、「エンジニアと非エンジニアのコミュニケーションも円滑にできるのでは」と期待を込める。
「データを受け取るとき、エンジニアはMarkdownで書かれていると扱いやすいことが多々ある。しかし、エンジニアではない人にとっては、Markdownで書いてといわれても壁がある。GitHub CopilotならMarkdownの書き方を支援してくれるので、エンジニアと非エンジニアの距離が縮まり、そこから生み出される成果物も良くなっていくのではないか。こうした一種のコミュニケーションツールとして、GitHub Copilotが使えたら面白いと思う」
一方で、注意している点もあるという。それは「導入して終わり」にしないことだ。最近の生成AI関連の動きを見るに、他にも魅力的なツールが出てくる可能性はある。今後は、定期的にエンジニアにアンケートを取り、利用の継続を判断していくという。
ただし「エンジニア不要」にはならない
AIが激的な進化を遂げる一方、必ずと言っていいほど持ち上がるのがエンジニア不要説だ。自然言語による指示でコードを自動生成してくれるとなると、この説もにわかに現実味を帯びてくる──と感じる層もいそうだ。だがそれは違う。ソフトウェア開発=コーディングが全てではない。企画、設計、構築、UI/UXの工夫、リリース後の改善など、どれもエンジニアの知識と経験、洞察力が不可欠だ。
ならば、新人エンジニアの教育係としてAIを活用することはあり得るのだろうか。優秀なエンジニアは引く手あまた。採用は年々厳しさを増している。仮に未経験者を採用し、GitHub Copilotとペアプログラミングすることで一人前に成長できるとしたら、特にエンジニア不足に悩む非IT業種にとって、一つの突破口になることも考えられる。ただ、加藤さんによれば、これも現時点では現実的ではないという。
「現時点ではそれも難しいと思う。大事なのは的確な指示を出せること。AIが理解しやすい形で自然言語化し、生成されたコードの良しあしも判断できる必要がある。未経験なら人間のメンターが絶対に必要。そのうえでGitHub Copilotを使うと良いと思う」(加藤さん)
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