なぜ? 日本のキャッシュレス決済手数料が高い理由(4/4 ページ)
諸悪の根源のように言われることの多いキャッシュレス決済の手数料だが、デビットカードの取り扱いに手数料率の制限がある米国や、それに加えてクレジットカードでも同様の制限のある欧州などに比べ、日本のカード決済手数料は全体に高いとされている。それは一体なぜか?
「いつもの決済方法がある日使えなくなる」は常に起きうる
先ほど、SquareやAirペイを例に挙げて「加盟店手数料は変化しない」としたが、実際にはそれ以外の決済サービスでは多くの加盟店はつねに手数料交渉を行っており、定期的に見直しが行われている。コスト高騰を理由にカードブランドやアクワイアラが引き上げを要求することもあれば、多くの場合は加盟店側が“新しい条件”を持ちかけて少しでも手数料を引き下げられないかと動く。
下の写真はその一例だが、筆者の元地元のスーパーのセミセルフレジでの掲示だ。このスーパーでは写真にあるように複数の電子マネーのほか、国際ブランドのクレジットカードやデビットカード、そしてコード決済としてPayPayが以前まで利用できていた。それが、あるタイミングで一斉にPayPayを除く電子マネーの取り扱いが取り止められてしまった。
ある情報源によれば、このスーパーのチェーンでは同じタイミングで取り扱い中の決済サービス各社に“ある同じ手数料率”を提示し、その要求に応じなかった決済をすべて切ったという。当然、これまで使えていた決済手段を急に利用できなくなった買い物客は不便を強いられることになるが、それでもなお手数料率を下げる方がビジネス上有利になると考えての決断だろう。
こういった動きは地元スーパーだけのローカルな話ではなく、世界中で起きている。先日、Amazon.co.ukが手数料率引き上げに同意せずVisaの取り扱いを止めると表明して話題となったが、同様に過去にはカナダのあるスーパーチェーンでVisaのみ取り扱いを停止したり、シンガポールでは数年にわたってタクシーでのVisa利用ができなかった状態が続いていた。
Costcoのように以前はAmerican Expressのみが利用できていたものが、現在ではMastercardのみを受け付けるといったケースもあったり、加盟店の意向のみならず、先ほどのJCBの図にあるようにカードブランドやイシュアの戦略的な動きで日々勢力図が塗り変わっている。
まとめると、キャッシュレス決済はあくまで“ツール”であり、加盟店がこれをいかにうまく使ってビジネスを成長あるいは維持できるかが重要だ。手数料率を理由に取り扱いを止めるのは自由だが、これを無料で使わせろというのは違う。昨今は「DX」という言葉がよく使われるが、こうしたツールの導入は会計処理のデジタル化を可能にし、ビジネスの効率を上げることにもつながる。
また、キャッシュレス決済は顧客サービスの一環でもあり、総合的にみてどの組み合わせが自身のメリットになるかを加盟店は考えるべきだ。決済事業者が一方的に強い世界でもなく、交渉の過程でベストなディールを引き出してほしい。
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