検索
ニュース

「LK-99は超電導体ではない」 Nature誌が掲載 世界中の科学者の追試結果を紹介

LK-99は超電導体ではない──英学術誌「Nature」は、そんなタイトルの記事を公開した。韓国チームは7月、「常温常圧で超電導性を示す物質を合成した」とする査読前論文を公開していたが、Natureはこれを否定する研究者たちの証言を紹介した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 LK-99は超電導体ではない──英学術誌「Nature」は8月16日(現地時間)、そんなタイトルの記事を公開した。韓国の研究チームは7月、「常温常圧で超電導性を示す物質を合成した」とする査読前論文を公開。世界中の科学者が関心を示していたが、Natureは「この物質が超電導体ではないという証拠が発見された」と複数の研究者の証言を紹介している。


Natureの記事

 LK-99が超電導体である証拠として韓国チームは、コイン状のサンプル物質が磁石の上で揺れている動画を公開。「サンプルは『マイスナー効果』(磁場を物体内部から押し出す現象で超電導体の特徴の一つ)によって浮いている」と主張していた。また、超電導を示す証拠として、104度付近でLK-99の電気抵抗率が急激に低下することも挙げていたことから、「常温超電導が実現するのでは?」と期待が寄せられていた。


韓国チームが合成したLK-99

 しかし、さまざまな研究者たちが検証した結果から「LK-99の不純物である硫化銅が磁石上での浮遊と、電気抵抗率の急激な低下を引き起こした原因」「超電導体が示す性質に類似している」などを示す証拠が見つかったという。

 浮遊現象については、世界中の科学者が追試をしても同じ現象を観測できなかった。米ハーバード大の元物性物理学者のデリック・ヴァン・ゲネップさんは、韓国チームが投稿した浮遊動画を見て「この現象は、強磁性が原因の可能性が高い」と指摘。実際に、グラファイトと鉄粉から非超電導性の強磁性物質を作り、韓国チームの投稿動画で確認できた浮遊現象を再現している。他にも北京大学の研究チームなどが同じ指摘をしている。

 一定温度下での電気抵抗率の急激な低下の原因も不純物の硫化銅にある。硫化銅には104度で相転移(物質の状態が変化する現象)する特性があり、この温度以下で空気に触れた硫化銅は、電気抵抗率が大幅に低下するという。これを指摘した米イリノイ大学の化学者であるプラシャント・ジェインさんは「韓国チームはこの特性を見逃していたことに不信感を覚えた」とコメントしている。

 他にも純粋なLK-99を合成したドイツの研究チームは「不純物を取り除いたLK-99は超電導体ではなく、数百万Ωの抵抗を持つ絶縁体である」と説明。「わずかな強磁性と反磁性を示すが、超電導性の存在は否定される」と結論付けている。


ドイツのマックス・プランク固体研究所のチームが合成したLK-99の純結晶

 Natureは、LK-99を発表した韓国チームに対してコメントを要請したが、16日時点でまだ回答は得られていないという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る