GoogleのトップAI研究者2人、東京でAI企業Sakana.ai立ち上げ
Google出身の著名なAI研究者2人が東京でAI企業Sakana AIを立ち上げた。リオン・ジョーンズ氏は生成AI革命のきっかけとなった2017年の論文の著者の1人。論文著者8人中、最後のGoogle在籍者だった。
米Googleの著名な2人の元研究者、リオン・ジョーンズ氏とデビッド・ハー氏が8月17日、東京に拠点を置く新AI企業を設立したとX(旧Twitter)で発表した。
ジョーンズ氏は、Googleが2017年に発表した生成AI革命のきっかけとなったと評価されている論文「Attention Is All You Need」(PDF)の8人の著者の1人。この論文では、後にChatGPTなどの製品開発の基礎となった深層学習アーキテクチャー、Transformerを紹介している。ジョーンズ氏は8月に10年以上勤めたGoogleを退社した。これで論文を書いた著者全員がGoogleからいなくなった。
ハー氏は2016年にGoogle Brain入りし、機械学習などの研究に取り組んだ後、2017年にGoogle Brainが東京チームを設立した際、そのトップとして来日した。2022年にGoogleを辞め、Stability AIの研究トップに迎えられたが、今年6月に退社した。
Sakana AIのWebサイトには「自然からインスピレーションを得たインテリジェンスに基づいた新しいタイプの基礎モデルを開発する」とある。独自の生成AIモデルを構築するということだろう。
企業名のSakanaはもちろん日本語の魚由来だ。「魚の群れが集まり、単純なルールから一貫した存在を形成する」というアイデアを想起することを目指しているという。
両氏は、現在のAIモデルの限界は、建築物のような脆弱で変更不可能な構造として設計されていることからきていると米Financial Timesに語った。それに比べ、魚群のような自然システムは環境変化に適応し、環境の一部になるという。
東京に拠点を定めたのは、1つには北米での研究者獲得競争を避けるためという。また、東京は、高度な教育を受けた労働力があり、国際的な都市であることから日本人以外の人材にとっても魅力があると考えたとしている。
ジョーンズ氏は米CNBCに対し、Googleは全社的に生成AIに集中しているが、「非常に制限的な枠組みなので」イノベーションは困難になっていると語った。
ハー氏はCNBCの他にもGoogleの従業員が参加するのかという質問に「Not yet」(まだ)と答えた。
【更新履歴:2023年8月18日午後2時20分 論文タイトルに誤りがありました。お詫びして訂正します。】
関連記事
- “AIのゴッドファーザー”ことヒントン博士、Googleを退社してAI開発に警鐘
“AIのゴッドファーザー”の二つ名を持つジェフリー・ヒントン博士がGoogleを辞めた。New York Timesのインタビューで「Googleを辞めたので、AIのリスクについて自由に話せるようになった」と語った。企業がAIシステムを改善するにつれて、危険は増大すると警鐘を鳴らす。 - 百花繚乱の大規模言語モデル その現状まとめ【2023年4月末版】
米OpenAIが独占的に提供する大規模言語モデル(LLM)に対し、さまざまなLLMが登場している。特に注目はオープンで自由な大規模言語モデル「Dolly-v2」だ。さながら現在は「不自由な大規模言語モデルと自由な大規模言語モデルの小競り合い」が起きている状態だ。 - Googleが実験中のチャットAI「Bard」、日本でも使えるように(ただし英語のみ)
米Googleが実験的に提供しているチャットAI「Bard」について、日本でもテストに参加できるようになった。ただし、現時点で会話できるのは英語のみ。 - Googleを解雇されたAI倫理研究者、独自研究所DAIR設立 フォード財団などが支援
1年前にGoogleを突然解雇されたAI研究者のティムニット・ゲブル氏が独立したAI研究所DAIR(分散型AI研究所)を設立した。「AIの研究、開発、展開に対するビッグテックの広範な影響に対抗する」としている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.