搭乗型ロボット「アーカックス」、試乗会の予定は“現状なし” そのワケは?
「搭乗型ロボ『アーカックス』のコックピットに乗り込める“試乗会”を開催する予定はない」──ロボット開発に取り組むツバメインダストリは、アーカックスのメディア向け内覧会でそんな方針を明かした。そのワケは?
「搭乗型ロボ『アーカックス』のコックピットに乗り込める“試乗会”を開催する予定はない」──ロボット開発に取り組むツバメインダストリ(東京都江戸川区)は8月19日、アーカックスのメディア向け内覧会でそんな方針を明かした。
アーカックスは全高約4.5m、重量約3.5tの巨大ロボット。コックピットを備え、人が乗り込んで操作でき、移動の他にも、2種類の形態に変化する「モードチェンジ」が行える。ツバメインダストリは同日に1体当たり4億円で国内先行販売を開始。10月には「ジャパンモビリティショー2023」に出展し、初の一般公開も行う予定だ。
このイベントでは、アーカックスの実物展示や実際に動かすデモンストレーションなどを行う予定だが、実際にコックピットに乗り込める“試乗会”はしない。ロボットファンであれば一度は乗ってみたいと考えるであろうところ、現状で試乗会を開催する予定は一切ないという。一体なぜか。
ツバメインダストリの石井啓範CTOは「アーカックスの最大のプライオリティは、“コックピットに乗って操縦すること”にあると思っている。だからこそ、購入してもらった人のみにその体験を提供したい」と話す。現状では購入者と同社のスタッフのみが操縦できる形だ。
操作に自動車免許などは必要ないが「かなり特殊な操作方式を取っている」と石井CTO。そのため操縦するには、専用の講習を設け、アーカックスのパイロットライセンスを取得してもらう形にしたいと展望を話す。「年齢制限などは現状考えていないが、コックピットの構造上、身長制限は科すかもしれない」(石井CTO)
最大の課題は“送料” 海外展開も視野に
アーカックスの開発には構想に3年、開発に2年半をかけ、ここまでたどり着くのに計5年半の歳月がかかったと同社の吉田龍央代表取締役は話す。「最終的な構想として、人の体の延長線上として、建築現場や災害復旧での重作業など、実際に社会の役に立つ作業をアーカックスで実現させたい。しかし、現状では重機を使った方が圧倒的に効率的であるため、まずはエンターテインメント向けに開発した」(吉田代表)
そこでアーカックスが目指したのは超富裕層向けのプロダクトというポジションだ。1億5000万円以上の超高級車やクルーザーなどをベンチマークにし、それらを集めるコレクターたちに目を付けた。彼らは国内外に存在しているため、海外販売も視野に入れているというが、アーカックス本体の送料が課題になっているという。
吉田代表は「日本での先行販売とした理由は、まさしくそこにある。ここがまずわれわれが乗り越えなければいけない最大のポイントであるため、まずは国内販売を通して検証を行っていきたい」と説明。国内販売する際の送料については明言を避けた。
「ゆくゆくはアーカックスを使ったeスポーツを実現させたい。実際に機体に乗ってフィールドを走りながら、プレイヤー同士で撃ち合う。そんなeスポーツをAR技術を駆使しながら実現できれば面白いと思う。他にもロボット自体をIP化して映像やゲーム化などの二次利用や、宇宙開発なども視野に入れた工業利用も目指していきたい」(吉田代表)
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