「分身を作る技術」研究中のNTT、SF小説を制作 未来を形にしたから“気付けたこと”:SFプロトタイピングに取り組む方法(2/4 ページ)
NTTが「SF小説」を作りました。新技術を研究するための視点や課題を見つけるチャレンジといいます。SFで描いた未来を見て気付いたことは何でしょうか。
NTTが実践したSFプロトタイピング その手順は?
大橋 SFプロトタイピングに着目されたのはどうしてなのでしょうか?
深山 NTTとして将来的なビジョンは設定しているのですが、そこを精緻に描き切るのが難しい。そこでSF作家の力を借りるため、SFプロトタイピングを提供している「WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所」に協力を依頼しました。
大橋 SFプロトタイピングはご存じだったのですか?
深山 SFプロトタイピングに多くの企業が取り組んでいることなど、存在は知っていました。
大橋 具体的にどのように取り組んだのかを教えてください。
高山 まずは「Input」として、Another Meと感性コミュニケーションのコンセプトや具体的な研究内容、AIと人との関係や哲学的検討、社会受容性に関する調査検討などの情報をSF作家さんとWIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所のみなさんに共有させていただきました。
その後、「仮説」のワークショップを2回、「科幻」(中国語でSFのこと)のワークショップを2回、合計で4回のワークショップ行いました。ワークショップは1回あたり2〜3時間かけています。
まず、ワークショップ1(仮説)では「発想を広げること」を目的として、NTTの技術のキーワードと未来の社会像のキーワードを抽出し、その2つの言葉を掛け合わせたアイデア発想を行いました。その時はコピーライターやデザイナー、法律家などさまざまな方にも参加してもらいました。
大橋 同じ研究者だけが集まると発想が偏るから、いろんな人に加わってもらったわけですね。何人くらいが参加されたのですか?
北端 参加者は20人くらいです。4〜5人で1つのチームを作り、4つのチームに分かれました。
深山 ワークショップ2(仮説)では「テーマの検討・決定」を目的として、Inputの不明点などを明らかにしながら、ワークショップ1で広げたアイデア発想に対して、技術者はどう思うか、技術者じゃない人はどう思うかといった具合にどのようなテーマがあるかを議論しました。また、われわれだけでなく、他のメンバーにも広げるインターナルワークショップも行い、議論を重ねました。
次に「プロット案作成」として、SF作家の吉上亮さんにAnother Meをテーマに、津久井五月さんには感性コミュニケーションをテーマに、これまでの議論からプロットを作成してもらいました。この時、津久井さんには方向の違う2種類のプロットを作っていただきました。
ワークショップ3(科幻)では「プロット案を固めること」を目的として、プロット案を基に、プロット時点での未来像に関してどのような社会が理想なのかなどの議論を行いました。
その後に吉上さんと津久井さんにSF小説を執筆していただき、ワークショップ4(科幻)では「小説についての議論」を目的として、小説で描いた未来について議論しました。
期間としては全体として3〜4カ月くらいかかっています。小説完成後のワークショップでは未来を想像し、バックキャスティングして今、どういう取り組みをして行くべきなのかを考えました。もちろん、最終的には社会実装することが目的です。
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