パナ渾身のIPスイッチャー「KAIROS」新アップデートの威力 タッチパネルPCを“操作卓”にする機能も:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/2 ページ)
スイッチングにおける映像処理を全てソフトウェアベースで行なうパナソニックのIPスイッチャー「KAIROS」。6月14日より新メインフレーム「Kairos Core 200(AT-KC200T)」を発売している。また7月21日には新システムソフトウェア「バージョン1.5.0」の提供を開始した。7月に福岡市で行なわれたQBEE(九州放送機器展)にて、その実機を見る事ができた。
新システムソフトウェアの威力
7月にリリースされた新システムソフトウェアは、新シリーズの性能をフルに引き出せるものとなっている。このアップデートにより、ソースのマルチ画面を4系統出力できるようになった。大型画面に1系統で全員で見るのではなく、必要な人達に必要なソースを小画面で配置できる。
これは特にイベント会場内にオペレーター卓を設置する場合、大きなディスプレイを置くと来場者の視界の邪魔になることや、来場者には見られなくないスイッチング前の映像までのぞき込まれてしまうといった問題を解決する。
加えてオプションソフトウェアを導入することで、タッチパネルモニターに表示したマルチ画面のタッチでスイッチングができるようになる。
従来こうしたオペレーションは、コントロールパネル埋め込みのディスプレイでは実装されていた。映像を見ながら、それを使いたければ直接触ればいいというのは直感的である一方、コントロールパネル埋め込みのディスプレイはせいぜい10インチ程度であり、それを9分割や12分割していると、1つのマスはかなり小さくなる。それでは正確に何が写っているのか、あるいは写ってはいけないものが入り込んでいないかというチェックが難しい。
今回Kairosでの実装は、タッチスクリーン搭載PCの画面を使ってオペレーションできるため、コントロール卓やKairos CreatorインストールPC以外に、コントローラーが増える事になる。対応OSはWindows10/11のみで、Mac OSには非対応である。現状Macにはタッチスクリーンモデルがないことから、当然であろう。
KAIROSは複数台のコントローラーが接続できるが、スタンダードタイプのパネルは270万円する。コンパクトタイプもリリースされ、こちらはオープン価格となっているが、恐らくスタンダードタイプの半額ぐらいだろう。コントローラーを複数台用意するのはなかなかの投資となる。このため、ソフトウェアだけでマルチ画面+コントローラーが増えるのは、ユーザーにとってはかなりありがたいはずだ。
タッチスクリーン操作は、専任オペレーターでなくても簡単に操作できるところをメリットとしているが、専任オペレーターでも画面タッチで切り替えできるなら楽になる。特に入力ソースは最大64入力もあり、これらを全部横1列のハードウェアスイッチだけで、1人でオペレーションするのはどだい無理がある。コントローラーが分散できて複数人でオペレーションできる点で、メリットが大きい。
ライブでの安定性をもたらすもう1つのポイントが、ST 2022-7で定義されたネットワークリダンダンシーの対応だ。これはネットワークを二重化しておき、片方に問題があったらシームレスにもう片方に乗り換えられる技術で、ケーブル1本でつながっているだけでは不安だという課題に対応する。ただしこの機能を使った場合、入出力数は半分になる。すでにCore 1000ではバージョン1.3.2で対応しているが、Core200および2000でも対応する。
従来型のSDI接続では、1つのケーブルに1本の映像信号しか流れない。一方IP伝送では、1本のケーブルに複数の映像信号が流れるため、1本の断線が致命的な結果をもたらす可能性がある。その分敷設が簡単というメリットもあったわけだが、ネットワークリダンダンシーはその中間を結ぶ技術として、今後も多くのIPスイッチャーで搭載が進むと思われる。
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