なぜ日本の論文数は増えないのか? 生成AIが“現状、救世主になれない”理由とは(1/2 ページ)
生成AIの出現によって、業務効率化を図る企業や自治体などが増えつつある。教育・研究機関でも同様に恩恵を受けられそうだが、日本の論文数は横ばいが続いている。テクノロジーは日本の教育・研究機関の救世主にはなり得ないのだろうか。
科学技術大国日本──今、その足元が揺らいでいる。内閣府「科学技術指導2023」によれば、ここ10年ほどで出された論文数は世界全体で急増しているものの、日本ではほぼ横ばい状態。そのため2000年から2010年までの10年間と比べ、シェアの割合が減り、ランクを1つ落としてしまっている。「Science」や「Nature」といった著名な科学ジャーナル誌での論文数シェアも低い。
一方、生成AIの出現によって、業務効率化を図る企業や自治体などが増えつつある。教育・研究機関でも同様に恩恵を受けられそうだが「現状、日本の論文数は増えていない」と、研究活動の支援事業を手掛けるカクタス・コミュニケーションズ日本法人(東京都千代田)の代表取締役である湯浅誠さんは話す。
なぜ日本の論文数は増えないのか。生成AIはその救世主になり得ないのか。日本の教育・研究機関の現状を探る。
なぜ日本の論文数は増えないのか
過去に掲載した記事「母語が“英語じゃない研究者”のデメリットはどのくらいある? 900人以上の科学者を調査」でも取り上げたように、英語を母語としない研究者が抱える論文執筆上のハンディキャップは大きい。
普段から英語で読んだり書いたり考えたりするわけではないので、語彙や表現の幅が狭い。しかも、日本語だけで複雑な概念を伝えられるため、意識的に努力しない限り、英語に触れる機会は減ってしまう。
一方、同じように英語を母語としない韓国や中国では、論文数が増えている。韓国の場合、書くことに集中できるよう大学側が論文執筆に当たって必要な費用をサポートする仕組みが整っているし、中国では国を挙げて研究者を呼び戻す政策に多額の費用が投じられている。
指導面でも状況は異なる。海外では論文執筆で行き詰まっても、専門スタッフのサポートを受けられる窓口があるが、日本にはほとんどない。師事している教授に尋ねたくとも、教授会や学会で留守にしている、あるいは学内の他の業務に忙殺されているため指導を受けるのが難しいのだ。
若手ほど、執筆する論文の数を増やし、自分の評価につなげる必要があるはずなのに、お金がない、指導を受けられないという“ナイナイ尽くし”で、数を増やせないというのが国内での現状なのだ。
また、そもそも大学院博士課程の入学者数も減少傾向にある。科学技術指導2023によれば、日本の博士課程入学者数は2003年度がピークであり、以降は数値を減らし続けている。一方、米国では企業の博士号保持者の数が過去10年で1.4倍となっており、研究者の数の差が大きくなりつつある。
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