なぜ日本の論文数は増えないのか? 生成AIが“現状、救世主になれない”理由とは(2/2 ページ)
生成AIの出現によって、業務効率化を図る企業や自治体などが増えつつある。教育・研究機関でも同様に恩恵を受けられそうだが、日本の論文数は横ばいが続いている。テクノロジーは日本の教育・研究機関の救世主にはなり得ないのだろうか。
テクノロジーは論文執筆の追い風になるか?
一方、近年さまざまな文章作成・翻訳ツールの性能が向上しており、以前よりも英語になじみやすい環境にはなっている。
例えば、適切な表現を思い付けないときに便利な「DeepL」「Google翻訳」といった翻訳ツール。また、文章全体のスタイルを整えたい、文法やスペルチェックなどの校正を行いたい、フレーズの言い換え(パラフレーズ)をしたい、など校正に関係したものであれば「Trinka」「QuillBot」「Writefull」なども活用できる。
カクタス・コミュニケーションズでもAI英文校正・翻訳ツール「Paperpal」を提供している。同社が20年間提供してきた人力校正サービスで培ったノウハウを取り入れて開発したもので、執筆中の内容が外部にもれないよう、サーバ保存されることもないという。
もともと、人力校正サービスを使っていたあさひ病院リハビリテーション科の竹中裕人さんはPaperpalを使った感想として「以前は1年に1本書けるかどうかというペースだったが、今では1カ月ほどで論文が形になるようになった」と使い勝手を話す。
「書いた論文はリジェクトされることもあるが、数は質を生む。AIの力を借りてたくさんの論文出すことが可能になったため、自分は質を上げる努力をしていきたい」(竹中さん)
求められる、使い手側のリテラシー
2022年以降、ここにさらに生成AIも参戦。米OpenAIのAIチャット「ChatGPT」を筆頭に、その能力の高さを社会に知らしめている。一部企業や自治体では、生成AIを業務に取り入れて効率化を図っているが、大学や研究機関ではそのような動きは活発ではなく、論文数が急激に上がる……などということは日本では起きてはいないという。
論文のアウトプット数が横ばいの理由について、湯浅さんは「大学や研究機関側が生成AIの利用を禁止/奨励しているということではなく、様子見という状態だからだ」と話す。
「主要コンテンツとなる部分を箇条書きにしたものを生成AIで文書化すれば、それは生成AIにオーサーシップを与えてしまうことになる。しかし、科学ジャーナル誌側では生成AIを共著者に含めることを許していない。世に出ていない研究結果や固有名詞をChatGPTに投げた結果、別の人へのレスポンスに“既知の情報”として利用される可能性もある。そのため、論文執筆中の研究者の判断で、まとまった情報を入れないようにしている。使い方に気を使っているというのが現状」(湯浅さん)
生成AIの登場により、仕事効率は上がったが、新たな課題も生まれている。しかし、それぞれに特化したAIをうまく使い分ければ、できることは格段に多くなる。湯浅さんは「(生成AIの出現によって)これまで英語で論文を書こうと考えなかった人にもチャレンジしてもらえるようになるのでは?」と期待する。
論文執筆を支援するさまざまなテクノロジーが登場している現在。そのメリットとデメリットを把握し、使い分けることで非ネイティブの研究者であっても、その研究の成果を世の中に発表しやすくなってきたのだ。
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