写真撮影やフィルム現像などを手掛ける昔ながらの写真店が、過去最多ペースで倒産している――東京商工リサーチが9月6日に公表した調査リポートでこんな事実が明らかになった。
2023年1〜8月の写真業の倒産は、前年同期(3件)から約7倍の20件に急増。コロナ禍を各種支援で乗り越えた企業も、止まらない需要減で苦境に立たされた。このペースが続くと、年間の倒産件数で過去最多だった2020年の26件を抜き、30件台に乗る可能性もあるとみている。
倒産の原因を見ると最多が「販売不振」(売上不振)の18件(前年同期比6倍)。残る2件は「他社倒産の余波」(前年同期ゼロ)だった。コロナ禍で結婚式や卒業式などの行事が減少した影響の「コロナ関連倒産」が13件あった。
負債額別で見ると、小・零細規模の倒産がほとんどで、最多が1000万円以上5000万円未満が17件(構成比85.0%)。続いて1億円以上5億円未満が2件(同10.0%)、5億円以上10億円未満が1件(同5.0%、前年同期ゼロ)だった。負債額最多は、広島県で結婚式場と提携して展開していたコマエ写場(負債9億円)。
1〜8月累計ではこれまで、2007年の倒産件数が最多の19件。カメラ付き携帯電話が浸透し、デジタルカメラも急成長、家庭用プリンタの普及で印刷も簡単・安価にできるようになった時期だ。
その後も、結婚式や入学・卒業、七五三などの記念では、撮影や現像でプロの技術が求められ、倒産は年間10件前後の小康状態が続いていた。20年以降はコロナ禍で卒業式や入学式、修学旅行、結婚式などの延期や中止、縮小が相次ぎ需要が急減した一方で、コロナ関連支援に支えられて倒産は大幅に減少。22年同期は過去最少の3件にとどまっていた。
今後は、「需要が急回復する見通しも立たず、少子化や資材などコスト増も進行するなど経営環境は厳しさを増している。プロの高い撮影技術や現像、加工処理の強みを活かし、付加価値を高めていく必要があるだろう」と東京商工リサーチは見解を述べている。
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