2万作品もの貴重なフィルム原版が失われる可能性──東京現像所の事業終了で 権利者に「連絡」呼び掛け
老舗ポストプロダクションの東京現像所が9月7日に公表したある案内が、映画関係者やファンに衝撃を与えている。11月末をもって事業を終了する同社は、預かっているフィルム原版の返却先と10月末までに連絡が取れない場合、廃棄対象になると告知したのだ。
老舗ポストプロダクションの東京現像所が9月7日に公表したある案内が、映画関係者やファンに衝撃を与えている。11月末をもって事業を終了する同社は、預かっているフィルム原版の返却先と10月末までに連絡が取れない場合、廃棄対象になると告知したのだ。
東京現像所は、過去70年近くにわたり多くの映画や映像作品を世の中に送り出してきた老舗。このため、SNSでは「このままでは貴重な作品のフィルム原版が失われる」「国立映画アーカイブで保管できないのか」といった声が上がった。
東京現像所によると、9月上旬時点で返却先と連絡が取れないフィルム原版は約2万作品(現在、確認を行っている数)。映画をはじめ、テレビ番組、テレビアニメ、記録映画、企業案内、CFなど多岐にわたる。フィルム上映のニーズがあった1970〜2000年代前半ごろまでの作品が中心だという。
東京現像所はこれまで連絡が取れる取引先にはメールや電話、封書で確認を進めてきた。しかし「発注先となる制作会社の解散、廃業、倒産など」で連絡が取れないケースが多かった。
なお、国立映画アーカイブへの寄贈については「既に相談済みですが、弊社は作品を預かっている立場。映画アーカイブへの寄贈は権利者の承諾がないと不可能なため、当社だけの判断では動かせない状態です」と説明している。
10月末まではメール窓口(genpan-henkyaku@tokyolab.co.jp)などで権利者からの連絡を待つ。「その後の取り扱いは弊社に一任とさせていただきますが、詳細は未定です」。
東京現像所は、東宝や大映など映画会社の出資により1955年に設立されたポストプロダクション。しかし映像製作のデジタル化など事業を取り巻く環境が大きく変わったことから「現在の事業をそのまま継続することは困難」と判断。2023年11月末をもって事業を終了することを明らかにしている。
【訂正:2023年9月14日12時00分更新 ※数字について注釈を加えました】
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