「電気味覚」の明大・宮下教授らがイグ・ノーベル賞受賞 電気を使って“味を変える”研究とは?
ユニークな研究に贈る「イグ・ノーベル賞」の2023年の受賞者が発表され、明治大学・宮下芳明教授と東京大学・中村裕美特任准教授が栄養学賞を受賞した。微弱な電気を食器などに流すことで、飲食物の味を変える「電気味覚」研究が評価された。
ユニークな研究に贈る「イグ・ノーベル賞」の2023年の受賞者が9月15日に発表され、明治大学・宮下芳明教授と東京大学・中村裕美特任准教授が栄養学賞を受賞した。微弱な電気を食器などに流すことで、飲食物の味を変える研究が評価された。
受賞対象となった論文は、2011年に宮下教授らが発表した「Augmented gustation using electricity」。内容は、微弱な電気が流れるストローや箸、フォークを使うことで、飲食物の味を変えるなど、電気を使った味覚の拡張を目指す電気味覚と呼ばれる研究分野の技術を紹介していた。
(関連記事:味をデジタル化する「電気味覚」の可能性(前編) 「味をSNSへ投稿する」を実現するための研究)
以降、この論文は電気味覚の研究分野で数多く引用されており、21年には“発表後10年間、多く引用されインパクトを与えた論文”に贈られる賞「Lasting Impact Award」を受賞していた。
今回のイグノーベル賞受賞に際し、宮下教授は「今回の受賞をとても光栄に思います。受賞対象論文は13年前に開発した技術に関するものですが、電気味覚技術や味覚メディア技術はその後、多方面に渡る発展と社会実装に至っています。そうした広がりや今後への期待が込められた受賞だと捉え、これからも研究を推進していきたいと思います」とコメントした。
宮下教授は現在も電気味覚の研究に積極的に取り組んでおり、直近では「“1那由他”通りの味を再現できる装置」を発表。他にも、キリンホールディングスと共同で「減塩食を“しょっぱく”感じられる箸型デバイス」を開発したり、「毒キノコの味を安全に体験できるようにする研究成果」などを発表してきた。新たな研究成果として10月には、「口臭を起こさずにニンニクを味わう方法」を発表する予定だ。
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